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2019年度大阪アンコール講演会を終えて

 日本塗装技術協会では、東京地区にて年3回講演会を開催しております。また、その内容を東京地区以外の皆さまにもお伝えするために、年1回ダイジェスト版として、アンコール講演会を開催しております。
 今年度のアンコール講演会は大阪地区において、「進化し続ける塗装技術〜今、そしてこれから我々が取り組む改革〜」と題して開催いたしました。我々塗装に関わる技術者は、常に今より価値の高い塗料の実現と環境負荷低減や生産性向上を成立させる技術開発に取り組んでいます。今回は、3つの角度からの取り組みを企画しました。
 まず、環境負荷低減と生産効率化に対する塗料からの取り組みです。次に、技術の定量化と活用による生産性向上への取り組みです。最後は、生産技術における環境負荷低減と生産効率化への取り組みです。
 どのご講演も難易度の高い課題を乗り越え、実用化につなげるという意欲と工夫が伝わる、聞きごたえのある内容でした。

 第1講演は日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社 石母田講師による「納期対応への実現と環境負荷低減へのアプローチ」として、多品種小ロットに対応し、かつ、工程短縮可能な粉体塗料の技術をご紹介いただきました。溶液型の塗料と比較して制限のある粉体塗料の弱点を克服し、よりその強みを生かすために、塗料製造から塗膜化まで、あらゆる工程を解析し、効果的なアプローチをされていました。

 第2講演は国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 藤本講師による「造船塗装技能教育の加速化、効率的な塗膜検査技術に関する取り組み」でした。造船業界におけるこれからの塗装技術を見据え、シミュレーション技術を用いた塗装技能者の訓練方法の開発や、塗膜の膜厚管理を簡便にする塗料についてご紹介いただきました。
 塗装のノウハウを把握し、的確に指導できる指導者とツールの両方がそろうことが大切ということ、また、数百ミクロンの塗膜の膜厚によって防錆性が変わり、船の事故を未然に防ぐ重要な役割を果たすことがよくわかりました。

 第3講演はマツダ株式会社 久保田講師による「自動車塗装の質感定量化技術について」でした。高意匠、かつ、環境配慮を両立する技術をますます高めていくための意匠計測技術についてご紹介いただきました。人が質感を認知するメカニズムを解析し、再現する方法をつくりあげ、その方法を用いた数々の研究事例は、興味が尽きない内容でした。このような確実な技術の進歩により、我々消費者は、これからも新しい、魅力的な意匠を目にする機会が訪れることでしょう。

 第4講演は日産自動車株式会社 後藤講師による「欧州塗装技術トレンド及び今後の塗装開発方向性」でした。欧州における塗装技術のトレンドについて前回よりもバージョンアップされた内容をご紹介いただきました。地域ごと、また、工程全体と個々の工程に対するさまざまな施策についてわかりやすくご説明いただき、製造工程を短縮化し、かつ、品質を高めるための技術開発を学ぶことができました。また、今後はさらにシミュレーション技術も実用化が進むことを実感しました。

 第5講演はトヨタ自動車株式会社 柴田講師による「自動車塗装工程の概要と課題への対応 容積とCO2排出を大幅に削減する塗装ラインの実用と今後の塗装におけるクルマづくりの動向」でした。車をモビリティとして捉え、日本だけでなく世界品質とコストの両立に向けての考え方や、また、100年に一度の改革として生産準備期間短縮など具体的な進め方について大変わかりやすくお話いただきました。未来を描き、今始めなければならないことを見据え、実行されていることは大変共感しました。

 聴講いただいた皆様は講師の方々の開発に対する情熱を直に受け取っていただけたようで、 講演終了後のアンケートにはほとんどの方から回答をいただくことができました。「様々な視点からの解説が興味深く、有意義だった。」「各社の異なる考えを聞くことができて参考になった」「他社や業界の動向を知ることができて、今後の技術開発に活用できそう」など高い評価をいただきました。
 日本塗装技術協会は、主に塗料・塗装について「技術の交流、伝承および発展へ貢献する」ことを目標に活動しております。これからも委員一同、日々の皆さまの技術活動に少しでも貢献できるような話題を提供していきたいと考えております。
 第2回講演会は2019年11月1日(金)「塗装技術におけるセンシング情報のボトムアップと活用〜AI、解析・予測・評価技術の実展開」と題して開催予定です。詳細は『塗装工学』誌、ホームページ等でお知らせしております。ご参照ください。皆様のご参加をお待ちしております。

2019年度アンコール大阪講演会
実行委員長 井賀 充香


講演会風景

主催日本塗装技術協会
協賛日本化学会色材協会日本塗装工業会
日本防錆技術協会表面技術協会日本自動車車体工業会
日本塗装機械工業会日本工業塗装協同組合連合会日本塗料工業会
日本塗料検査協会日本油化学会高分子学会
自動車技術会材料技術研究協会静電気学会
日本印刷学会粉体工学会腐食防食協会
日本建築仕上学会日本レオロジー学会国際工業塗装高度化推進会議
日本粉体工業技術協会

期日2019年7月26日(金)
会場エル・おおさか(大阪府立労働センター) 南館 5階 南ホール  大阪市中央区北浜東3-14

参加費日本塗装技術協会 及び協賛学協会 会員16,200円
非会員21,600円
学生参加者3,240円

プログラム

10:00〜10:10  開会の挨拶とガイダンス    日本塗装技術協会 セミナー委員会
講演1 「納期対応の実現と環境負荷低減へのアプローチ」
10:10〜11:00 日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社
GIU事業本部 第二技術部 部長 石母田 佳和
従粉体塗料は生産設備の都合で小ロット、短納期対応には適していないとされるが、溶剤系塗料と同じようなCCM(コンピューターカラーマッチング)を兼ね備えた粉体原色調色システムの開発により「1kg〜、2時間以内」を実現した。本講演では、塗装技術の視点を加えてその制御技術と実例について紹介する。

講演2 「造船塗装技能教育の加速化、効率的な塗膜検査技術に関する取り組み」
11:05〜11:55 国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
海上技術安全研究所 主任研究員 藤本 修平
従来は見様見真似で行われてきた造船塗装の技能教育の加速化を目的とした、3D-VRシミュレータを用いた技能研修プログラム開発について述べる。また、広い面積の塗膜検査を効率的に行う手法の研究について解説する。

昼食休憩(75分間)
講演3 「自動車塗装の質感定量化技術について」
13:10〜14:00 マツダ株式会社
技術研究所 革新研究創成部門 創成領域研究 久保田 寛
自動車塗装の質感定量化技術として、面歪パターン測定やイメージ分光測定による評価/解析技術の概要と具体的な自動車塗装開発への展開事例について紹介する。


講演4 「欧州塗装技術トレンド及び今後の開発方向性」
14:05〜14:45 日産自動車株式会社
エキスパートリーダー 後藤 丈志
Surcar, Automotive circle等の海外技術会議及び各種ベンチマーク情報より得た最新の技術トレンドを共有すると共にそこから考える技術開発の方向性について紹介する。


休憩(10分間)
講演5 「自動車塗装工程の概要と課題への対応容積とCO2排出を大幅に削減する塗装ラインの実用と今後の塗装におけるクルマづくりの動向」
14:55〜15:35 トヨタ自動車株式会社 MS成形塗装生技部
室長 柴田 浩行
わずか数十ミクロンの塗膜で美しい外観意匠や高耐候機能を発揮する自動車塗装について、その生産工程の概要と課題を説明、また100年に一度の大変革期を迎え取り組む課題と仕事の進め方の変革と共に、及び今後の塗装の動向について説明する。




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