プログラムへ

2021年度(令和3年度)アンコール講演会を終えて

 日本塗装技術協会では、コロナ感染防止を考慮し昨年度よりウエビナー形式にてオンラインでの講演会を開催しております。今回、9月10日に「進歩し続ける塗装技術(U)」〜塗膜機能と塗装に関する技術紹介〜と題しまして、2019年度以降に開催しました講演会よりダイジェスト版として選りすぐった演題をアンコール講演会として開催致しました。当日は、約40名の皆さまにご参加いただきまして、幅広い領域におけるご講演が好評でした。
講師の方々におかれましては、ご多忙のところ執筆・ご講演と多大なるご協力を賜りましたこと、この場をお借りしまして改めて御礼申し上げます。

今回は、塗膜の高機能化への需要の高まりに対して塗料が塗膜になる過程での周辺技術。製造業が直面する人材不足や品質管理の課題解決に向けた材料の耐久予測やライン生産の安定化システム。そしてグローバル社会全体で考えなくてはならない環境負荷低減の塗装プロセスの塗膜形成解析や塗装システムに着眼し開催させていただきました。

第1講演は、『多層膜塗装の各層及び界面の機械的特性分析』とのテーマで、株式会社パルメソ 代表取締役 松原亨様より、MSE装置における試験結果の応用に至るまで、特に劣化から強度を得る手法を塗装膜の解析に役立てる内容として、新たな情報や貴重なデータのご講演をいただきました。塗装膜解析への応用は好奇心を刺激された内容でした。

第2講演は、『SPring-8放射光を用いたX線イメージによるメタリック塗膜形成における光輝材の挙動解析』とのテーマで、ダイハツ工業株式会社 コーポレート統括本部 LYU・SDGs・環境推進室 主任 中山泰様より、SPring-8施設説明の普段聞くことのできない貴重な体験談から始まり、塗装の吹付け後の塗膜収縮過程でのアルミフレークの配向挙動解析やベースとクリアの多層膜への影響までを大変貴重な映像を交えご講演をいただきました。

第3講演は、『電子線の工業利用の現状と今後の展望』とのテーマで、住重アテックス株式会社 新規事業室 主席技師 山瀬豊様より、塗装業界ではなじみの薄い電子線照射の仕組みや特性、工業利用への用途を分かりやすくご説明いただきました。また塗装分野へ活用することで期待できる環境に関する課題解決に向けた技術としてご講演をいただきました。

第4講演は、『自動車部品向け高機能加飾フィルムの開発』とのテーマで、日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社 フィルム事業部 事業部長 小林和人様より、フィルム化=脱塗装ではなく加飾の手法として、また塗膜の提供としてフィルムにより製品加飾設計の自由度の広がりを現状のフィルム技術の紹介を含めご講演をいただきました。

第5講演は、『モーションキャプチャ技術を応用した塗装ロボットティーチングシステムの開発』とのテーマで、旭サナック株式会社 品質保証部 品質保証室 室長 加藤雅宏様より、専用ハンドガンで手吹き塗装するだけで、塗装ロボットのティーチングへ再現される技術精度や生産性向上に繋がるご説明をいただきました。今後の自動化への普及に留まらず更なる可能性を期待させていただけるお話でした。

第6講演は、『超高塗着エアレス塗装システムの開発』とのテーマで、トヨタ自動車株式会社 車両生技開発部 高意匠G 主幹(プロジェクトマネージャー) 谷真二様より、50年ぶりの加工点の大変革となる開発に至る過程や着眼点、実用までご苦労された課題解決や耐久実績に至るまで、微粒化のメカニズムの説明に加えご講演をいただきました。超高塗着の実績と今後の動向を見守らせていただきたいと感じるお話でした。

ご講演は予稿集資料の発表に留まらず、当日アンコール講演だからこその新たな情報やご聴講いただいた方だけの耳寄りな情報などを織り込んでいただき、よりご満足をいただけた内容になったものと確信しております。
日本塗装技術協会は、主に塗料・塗装について「技術の交流、伝承および発展へ貢献する」ことを目標に活動しております。これからも委員一同、日々の皆さまの技術活動に少しでも貢献できるような話題を提供していきたいと考えております。

次回の講演会は、2021年度第2回講演会『コーティングにおけるSDGsの考え方とアクティブなアプローチを目指して』〜量産ラインのスマート化とエネルギーロス低減技術の紹介〜と題して2021年11月12日(金)にオンライン開催致します。
塗装技術協会セミナー委員一同、皆様のご参加をお待ちしております。

令和3年度 アンコール講演会
実行委員長 小林一弘

主催一般社団法人
日本塗装技術協会
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本塗装機械工業会高分子学会日本工業塗装協同組合連合会
日本自動車車体工業会日本防錆技術協会材料技術研究協会
日本レオロジー学会日本印刷学会日本建築仕上学会
日本塗料検査協会日本油化学会腐食防食協会
自動車技術会静電気学会日本粉体工業技術協会
国際工業塗装高度化推進会議エポキシ樹脂技術協会

期日2021年 9月10日(金) 10:00〜17:30
会場オンライン開催

参加費日本塗装技術協会 及び協賛学協会 会員16,500円
非会員22,200円
学生参加者3,300円

プログラム

10:00〜10:10  開会の挨拶とガイダンス  日本塗装技術協会 アンコール講演会実行委員長
講演1 「多層膜塗装の各層及び界面の機械的特性分析」
10:10〜11:00 株式会社パルメソ
代表取締役 松原 亨
塗装における薄い膜の強さ分布や多層膜各層の強さ及び界面の強さの計測が求められている。新たに開発された「MSE試験」を使って表面から内部までの精密な強さ分布を取得し、そこから読みとれる強さに関して考察を試みた。本講演ではいくつかの事例を使って分析内容を紹介する。

休憩(5分間)
講演2 「SPring-8放射光を用いたX線イメージングによるメタリック塗膜形成における光輝材の挙動解析」
11:15〜12:15 ダイハツ工業株式会社
コーポレート統括本部 LYU・SDGs・環境推進室
主任 中山 泰
X線イメージングによる自動車メタリック塗装の光輝材挙動解析を行った。過去の解析結果から、塗装後の溶剤揮発に伴い光輝材が配向することが判っている。今回新たに、塗装直後の初期段階での光輝材の流動現象やクリア塗装後の配向変化等が確認でき、体積収縮及び粘度変化の影響が示唆された。

昼食休憩(60分間)
講演3 「電子線の工業利用の現状と今後の展望」
13:15〜14:15 住重アテックス株式会社 新規事業室
主席技師 山瀬 豊
電子加速器による電子線(EB)の工業利用として、表面処理、塗装等キユアリング、架橋、グラフト重合、分解利用等の各素材の電子線による機能性向上の事例を中心に紹介解説する。

休憩(5分間)
講演4 「自動車部品向け高機能加飾フィルムの開発」
14:20〜15:20 日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
技術本部 機能商品開発部 新規加飾エリア
エリアマネージャー 小林 和人
CASE、MASS、ADASに付随する技術革新や、カーボンニュートラルへの取り組みなど、車を取り巻く環境は刻々と変わり、塗膜に求められる機能やその工法にも変化が求められている。本講演では自動車部品向けのフィルム加飾技術にフォーカスを当て、求められる機能及び意匠を両立させる技術、またそれを実現させる加工プロセスについて紹介する。

休憩(5分間)
講演5 「モーションキャプチャ技術を応用した塗装ロボット ティーチングシステムの開発」
15:25〜16:25 旭サナック株式会社 品質保証部品質保証室
室長 加藤 雅宏
多関節の塗装ロボットを活用するにはワーク形状に合わせてティーチングプログラムを作成する必要があり、その熟練者の養成と作業時間の確保が大きな課題となっている。
そこで、手吹き塗装の軌跡を読み取ることでティーチングプログラムを自動的に生成できるシステムを開発した。

休憩(5分間)
講演6 「超高塗着エアレス塗装システム開発」
16:30〜17:30 トヨタ自動車株式会社 車両生技開発部
主幹(プロジェクトマネージャー) 谷 真二
従来塗装機のシェービングエアを廃止し、塗料を静電気の力を最大限に利用して微粒化、飛行、塗着させ、塗着効率を圧倒的に向上させた。その結果コスト低減だけでなく、CO2や水資源に対する環境負荷を圧倒的に削減できる。将来の塗装工場の景色を大きく変えることのできる、この「加工点」変更開発におけるプロセスとその成果を紹介する。



Copyright(C); 2006, Japan Coating Technology Association. All Rights Reserved.