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2022年度アンコール ONLINE講演会を終えて

 日本塗装技術協会では、年3回の講演を実施しております。より多くの皆さまに、より良い技術情報を得ていただくために、前年度の好評だった講演を選定し、アンコール講演会を開催しております。今回もニューノーマルな時代に即してONLINE形式で講演会を実施いたしました。
 近年世界的にCO排出規制の気運が高まり、塗装・塗料の技術分野においても、これまで以上に地球環境保護と同時に新しい工程や工法、コスト削減に向けて各社切磋琢磨して取り組んでいます。本講演では、問題解決につながる塗膜欠陥検査の自動化、塗料・塗装のサステナビリティに関わる活動、静電気を利用した高塗着塗装技術、自動車塗装技術からオリジナル自動化システムの開発およびカーボンニュートラルに向けた積極的な活動について、動画も交え、現在各社が取り組まれている検査・塗料・塗装のエンジニアリング内容について最新情報を加えて、ご講演いただきました。はじめに、講師の皆さま方には、この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。

 第1講演は、「塗装表面欠陥検査システムの紹介」の演題で、リコーエレメックス株式会社 近藤 聡仁 講師よりご講演いただきました。ランプと縞模様と撮影方法とカメラの工夫で、高速かつ様々種類の欠陥を自動で検出・認識し、その位置や種別まで捉えることができるという装置でした。その撮影から欠陥ができる要因解析まで応用ができる事例も紹介いただき、今後さらに応用展開が進むということで期待できるものになると確信しております。

 第2講演では、「コーティングス事業とサステナビリティ」の演題にて、BASFジャパン株式会社 江森 野歩 講師よりご講演いただきました。グローバルでサステナビリティ・トランスフォーメンション(SX)への取り組みが積極的に進められており、世界的にはCO排出量が増えているにも関わらず、1990年からカーボンニュートラルへの流れを具体的に数値でコミットメントを実施、自分たちの製品について、原材料、製造方法、材質の環境対応、塗装方法、などLCAの観点、サステナビリティに対する会社間ネットワークも考慮されている内容で、化学会社の見本となる講演であったと思います。

 第3講演では、「エレクトロスプレー技術を用いた高塗着効率塗布システム」の演題にて、アネスト岩田株式会社 柿崎 翔志 講師より講演いただきました。 低吐出量領域での高塗着効率方法で、静電気のみで微粒化させて、エアスプレーやディップ塗装ではできない静電気の特性をうまく活用した塗装装置を開発されていました。動画を多数活用され、聴講者もイメージができたと思います。現状では、塗料などで制限があるということですが、今後のさらなる装置開発の発展に期待したいと思います。

 第4講演は、「スライドドア内板塗装自動化の取り組み」について、本田技研工業株式会社 古野 賢也 講師よりご講演いただきました。 本当に知恵と工夫があふれた内容であり、グローバルで展開されている最新の各塗装現場の用途に合わせた、経験・アイデア・現場主義から技術ノウハウ設計について、図と動画を交えながらプレゼンいただきました。冒頭、世の中にないものなら、自分達で発明、製作するというhonda様のポリシーを聞き、実際にグローバルで社員のみなさんが考え抜いての製作工程、塗装設計されていること、自分達が設計製作してきた意気込みと開発された数の多さにも感動いたしました。

 第5講演では、「塗装工場カーボンニュートラル(工場CN)の取り組み」の演題で、トヨタ自動車株式会社 加藤 大雄 講師よりご講演いただきました。 トヨタ自動車様のカーボンニュートラルへの取り組みが、加速的に実施され、ありとあらゆる方面から、2050年ではなく、2035年へ15年前倒しして達成させるという興味深い内容でした。生産現場における脱炭素化の取り組みとして、日常改善、ものづくり革新 、再エネ・水素活用の3つの視点から、“からくり”や熱エネルギーの使い方、材料・スペース・加工数のミニマム化、適材適所での事前エネルギーの活用など多角的に取り組まれている多くの事例を紹介いただき、幅広くトヨタ様の環境チャレンジ活動を知ることができました。

 講演会にご参加いただいた皆様、ご質問やご意見、アンケートにご協力いただき誠にありがとうございました。本講演会の情報が少しでも、参加いたただいた皆様の役立つものとなれば幸いに存じます。
 次の講演会は、2022年度第2回講演会は、2022年11月18日「塗料塗装分野の評価の数値化とDXを目指して」 塗装と評価 〜 数値化、デジタル化、プロセス管理 〜 講演会を開催予定ですので、奮ってご参加いただけると幸いです。

2022年アンコール講演会
実行委員長 関西ペイント(株) 中岡 豊人

主催一般社団法人
日本塗装技術協会
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本塗装機械工業会高分子学会日本工業塗装協同組合連合会
日本自動車車体工業会日本防錆技術協会材料技術研究協会
日本レオロジー学会日本印刷学会日本建築仕上学会
日本塗料検査協会日本油化学会腐食防食協会
自動車技術会静電気学会日本粉体工業技術協会
国際工業塗装高度化推進会議エポキシ樹脂技術協会

期日2022年 9月 2日(金) 09:50〜16:20
会場オンライン開催

参加費日本塗装技術協会 及び協賛学協会 会員16,500円
非会員22,200円
学生参加者3,300円

プログラム

09:50〜10:00  開会の挨拶とガイダンス    日本塗装技術協会 アンコール講演会実行委員長
講演1 「塗装表面欠陥検査システムの紹介」
10:00〜11:00 リコーエレメックス株式会社
産業機器事業部 営業室 商品企画G
近藤 聡仁
塗装品表面検査は目視検査されており、未だ多くの面で課題(流出防止/品質管理/検査員育成)が存在します。検査自動化にてそれら課題の解決をお手伝い致します。塗装表面に発生するブツ、ハジキ等の欠陥を特殊な目(撮像機器)と脳(判定ソフト)を使い自動検査が可能になっています。さらに検査結果データを自動集計/分析する事で塗装工程へ改善のフィードバックを行います。
「不良を見つける検査」から「問題解決につなげる検査」への転換で収益改善のお役立ちを狙います。

休憩(5分間)
講演2 「コーティングス事業とサステナビリティ」
11:05〜12:05 BASFジャパン株式会社
コーティングス事業部
自動車塗料部
マネージャー 江森 野歩
昨今はSDGs、ライフサイクルアセスメント、カーボンフットプリント等々の「サステナビリティ」に関連する単語を耳にする機会が多い。そして、「サステナビリティ」は私達の生活や仕事に変化をもたらす要因の一つになってきている。塗料・塗装に携わる一化学メーカーとして、我々を取り巻く環境や今後の展望等を幾つかの事例を交えて紹介する。

昼食休憩(60分間)
講演3 「エレクトロスプレー技術を用いた高塗着効率塗布システム」
13:05〜14:05 アネスト岩田株式会社
コーティングシステム部
装置技術開発グループ
EAC技術チーム
柿崎 翔志
塗着効率は塗布において重要な要素であり、塗着効率が低ければ液剤消費が多いだけでなく、作業を行う環境保全設備で余計にエネルギーを消費する。特に微細なワークでは塗着効率が低く、このような問題が顕著となる。
今回紹介するEAコーティングは静電噴霧方式を採用しており、少流量で高塗着効率であるため、微細なワークにおける上記問題への有効な手立てとなると考えている。

休憩(5分間)
講演4 「スライドドア内板塗装自動化の取り組み」
14:10〜15:10 本田技研工業株式会社
車体生産技術部
古野 賢也
内装塗装自動化技術について過去から取り組んでおり、拠点特性/生産機種により自動化方案を最適化してきた。スライドドア機種にあたっては、ドアを別体とすることで自動化生産しているが、ボディ一体とする自動化技術の確立は難易度が高かった。そこでドア治具と開閉ツールを自社開発し、これを実現した。
本講演では、これまでの内装自動化への取り組みを紹介する。

休憩(5分間)
講演5 「塗装工場カーボンニュートラル(工場CN)の取り組み」
15:15〜16:15 トヨタ自動車株式会社
車両製造技術開発部 環境G
GM
加藤 大雄
トヨタでは脱炭素機運の向上から、2035年カーボンニュートラル(CN)達成を目指している。達成には低CO2生産技術の開発・導入によるCO2排出量の削減が必須であるが、CNをモノづくり改革のチャンスと捉え、積極的に取り組んでいる。トヨタの取り組みと塗装工場のCO2削減について例を挙げてご紹介する。



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