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<講演会報告> 平成29年度 アンコール大阪講演会を終えて

 日本塗装技術協会では、塗料・塗装に関わるテーマを中心に、年3回の講演会を東京地区にて企画・開催しております。それに加えて東京以外の地区の皆さまにもオンタイムで良質な技術情報をお届けするため、過去に講演された中から選りすぐりのテーマを選定し、アンコール講演会と称して年一回開催しております。
 今年度のアンコール講演会は、開催場所を昨年同様大阪地区とし、「塗装の課題を科学で解決!!〜塗装プロセスデザインと見える化技術の最前線〜」をテーマに、2017年7月28日(金)にエル・おおさか(大阪府立労働センター内)にて開催いたしました。塗装・塗料の技術分野においても、これまでにない機能、コスト削減、新しい工程や工法、省エネ・環境対応が求められている中、今回は、塗装プロセスに対する新しいご提案、塗装ブースのエネルギー削減技術、また、最先端の解析技術やIoTを活用したさらなる技術革新への取り組みなどについてお話いただくことができました。講師の皆様には、改めて厚く御礼申し上げます。
 第1講演は、「排水浄化システム(バイオ浄化・防塵・脱臭システム)」について、(株)アイエンスの吉田講師よりご講演いただきました。微生物の代謝原理を踏まえた新規の排水浄化システムについてメカニズムから採用事例まで初心者にも理解しやすいようご説明いただきました。
 第2講演では、「静電気管理によるごみ不良対策」と題して、(株)コガネイの深田講師よりお話をいただきました。帯電の理論、除去技術の基礎と静電気対策について、理解を深めるいい機会になったと思います。
 第3講演では、「自動車外装への新しい提案 Wet工法からDry工法へ」と題して、布施真空(株)の三浦講師より、真空加飾技術である従来のTOM工法をさらに進化させたNeo-TOM工法に関してのご講演をいただきました。意匠付与だけでなくその特徴を踏まえた新しい機能付与についてのお話もあり、塗装のあり方について考えさせられる内容でした。
 続く第4講演は、「塗装可視化へのチャレンジ <SPring8放射光を用いたX線イメージングによるメタリック塗膜形成過程観察方法>」と題して、ダイハツ工業(株)の神澤講師並びに中山講師より、最先端の解析技術を活用した塗装プロセスの可視化に関する取り組みについてご紹介いただきました。従来は想像の域を出ることのなかったアルミ配向の様子をこの目で確認したこの事例は、塗装技術者の誰もが関心を寄せる画期的な内容であると感じました。
 第5講演では、「自動車用塗装ブースのエネルギー削減技術」と題して、(株)大気社の崎田講師より、プレコート式ドライ塗装ブースシステムについてご講演いただきました。プレコート剤を用いた新しい塗料ミスト捕集技術により、従来の湿式ブースと比較して大きな省エネ効果、環境負荷低減効果が見込めるとのことで、大変参考になりました。
 最後の第6講演では、「IoT時代に向けたオムロンのAutomation革新」と題し、オムロン(株)の本条講師より、巷で流行しているIoT技術についての最新動向、実際の活用事例や自らの経験や技術ノウハウなどについて、詳細にお話をいただきました。これまでおぼろげながら感じていた情報技術に対するイメージを具体的に知ることができました。今後の技術開発に活用できればと思います。
 最後に、講演会に参加者の皆さまには、会場でのご質問やご意見、アンケートにご協力いただき誠にありがとうございました。本講演会の内容が少しでも皆さまのお役に立つことがあれば、大変嬉しく思います。
 日本塗装技術協会は、創立54年目を迎え、塗料・塗装に携わる技術者、研究者を主な対象として情報交換の場を設けております。当講演会についても「技術の交流、伝承および発展へ貢献する」ことを目標に活動を続けております。次回の定期開催講演会(第2回講演会)は、「錆との闘い〜防錆技術の基礎と将来動向〜」の大テーマにて10月27日(金)に開催予定です。最新の情報に直接肌で触れることで、今後の活動の一助になればと存じます。皆さまのご参加を心よりお待ちしております。

平成29年度アンコール大阪講演会
実行委員長  湊 康学


講演会風景

主催日本塗装技術協会
協賛日本化学会色材協会日本塗装工業会
日本防錆技術協会表面技術協会日本自動車車体工業会
日本塗装機械工業会日本工業塗装協同組合連合会日本塗料工業会
日本塗料検査協会高分子学会自動車技術会
材料技術研究協会静電気学会日本印刷学会
粉体工学会日本金属学会日本建築学会
日本建築仕上学会日本粉体工業技術協会日本レオロジー学会
腐食防食協会日本油化学会国際工業塗装高度化推進会議

期日平成29年7月28日(金)
会場エル・おおさか(大阪府立労働センター) 南館 5階 南ホール  大阪市中央区北浜東3-14

参加費日本塗装技術協会 及び協賛学協会 会員16,200円
非会員21,600円
学生参加者3,240円

プログラム

10:20〜10:30  開会の挨拶とガイダンス    日本塗装技術協会 セミナー委員会
講演1 「排水浄化システム(バイオ浄化・防塵・脱臭システム)」
10:30〜11:25 株式会社 アイエンス
代表取締役 吉田 憲史
塗装ブースの水質問題、水質による臭気問題に対する処置提案。激しい水流で、省エネ酸素溶解。高い酸素溶解効率と強力な撹拌対流を両立。アクアブラスターはこれまでの水処理の常識を根底から覆すシステム紹介。

講演2 「静電気管理によるごみ不良対策」
11:30〜12:00 株式会社 コガネイ
コガネイインターナショナルアメリカ 深田 佳成
塗装帯電した塗装対象物へのごみの付着が塗装不良の問題となっている。塗装対象物の停電電位の特性と静電気の除去豊富の1つであるイオナイザの効率的な使用方法及びエアブローによる付着ゴミの効果的な除去方法を説明する。

昼食休憩(75分間)
講演3 「自動車外装への新しい提案 Wet工法からDry工法へ」
13:15〜14:05 布施真空 株式会社
代表取締役 三浦 高行
真空成形法から誕生した3次元表面加飾法「TOM工法」は自動車内装品の新しい工法として広く採用されるに至っているが、さらに此の工法を進化させ自動車外装加飾(塗装代替)への応用を目標として「Neo-TOM工法」について解説する。


講演4 「塗装可視化へのチャレンジ <SPring8放射光を用いたX線イメージングによるメタリック塗膜形成過程観察方法>」
14:10〜14:40 ダイハツ工業 株式会社 生産技術部 技術企画室
主担当員 神澤 啓彰、主任 中山 泰
塗装を理解する上で、現象を直接観察出来ないことが大きな障壁となる場合があり、それが「塗装はわからない」ということになりがちです。今回、色合せという課題をきっかけとして、従来可視化できていなかったメタリック色の塗膜形成過程を、大型放射光設備(SPring8)によって可視化することにチャレンジし、世界初の映像を得ることができましたので報告します。


休憩(10分間)
講演5 「自動車用塗装ブースのエネルギー削減技術」
14:50〜15:40 株式会社 大気社
塗装システム事業部 設計開発統括部 崎田 賢治
自動車用塗装ブースは更なる省エネルギー化と環境負荷低減が求められている。新しく開発した省エネルギー・低CO2排出が可能なプレコート式ドライ塗装システムを紹介する。


講演6 「IOT時代に向けたオムロンのAutomation革新」
15:45〜16:40 オムロン株式会社 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー
企画室 IoTプロジェクト 本条 智仁
オムロンは、最新技術やグローバルスタンダード技術を活用しながら制御進化と共にIoT化に取組み、商品化しています。
今回は、自社工場のIoT化の取組事例や同社の考える今後の製造現場におけるデータ活用の展望について紹介いたします。




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