プログラム

<講演会報告>

令和元年度 第1回講演会を終えて

 新しい元号となり、日本塗装技術協会としても一般社団法人化となって最初の、令和元年度第1回講演会「塗膜高機能化への技術展開 〜360°からのチャレンジ〜」を、7月12日に日本ペイントホールディングス株式会社東京事業所センタービルAホールで50名を超える聴講者をお迎えして、開催いたしました。
 最初は『ディスプレイ用ぎらつき抑制アンチグレアコーティング剤の開発動向とぎらつきの定量開手法』と題して、アフロディ株式会社の嶋講師と日本加工塗料株式会社の清水講師から、様々な機能を持つディスプレイの紹介から解像度が上がってきたために問題となってきた〈ぎらつき〉をどう防いでいくか、それを定量的に評価する手法までをわかりやすく解説していただきました。
 のんびりテレビを見ていられるための技術がいかに進歩しているかを実感しました。
 2つ目はがらりと変わって『耐熱塗料の解説と開発動向』と題してオキツモ株式会社の森長講師から、耐熱塗料と一言で言っても、シリコーン系樹脂での耐熱性以外の機能との組み合わせによる変性の有無、きわめて高い耐候性も有するゾルーゲル系を、最後には身近なLED光源に用いられる耐熱レジストインキまでご紹介いただきました。
 身近なものから大型設備まで必要とされる耐熱塗料は広い領域の皆さまに関わるアイテムだと感じました。
 3つ目は『塗膜開発を支える非破壊検査技術』と題して、東芝ナノアナリシス株式会社の照井講師から、X線を利用しての解析・測定手法に関し、ただ可視化するだけではなくどのように数値化して対象物の詳細情報を得るか、をご紹介していただきました。
 見ることのできない内部構造を観察し立体的に解析することの大切さを学ばせていただきました。
 4つ目は『電子線の工業利用の現状と今後の展望』と題して、住重アテックス株式会社の山瀬講師から、まだ塗装業界ではなじみの薄い電子線照射の仕組み・他の処理方法との比較も交えた硬化や表面改質作用・用途についてわかりやすく、かつ、高低それぞれのエネルギーによる広範囲での工業的利用事例をご紹介いただきました。
 これからは熱やUVに代わる処理方法として注目していく技術であることに確信が持てました。
 最後は『自動車電装部品向け機能性UVハードコート』と題して、日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社の小林講師から、多機能化している自動車内装部品等において光学的・物理的機能付与を実現し、摺動耐久性も向上できるコア技術を採用することで、塗膜によって製品設計の自由度を向上させることができることをご紹介いただきました。
 塗装による商品多機能化が実現できることで、まさに塗装の役割が拡大するとともに技術が進化していることを感じました。
 ご来場いただいたみなさまからは、聴講前には興味をひかれなかったが、聞いてみると興味を持ち参考になったとのご意見を数多くいただきました。
 新しいことに興味を抱き、そこから芋づる式に知見を増やしていただけることにお手伝いすることができれば、こんなうれしいことはありません。
 今回は機能付与による商品性の向上を目指し、それを具現化するための材料・手段および評価方法のごく一部をご紹介いたしました。
 まだまだ多くの技術と手法に満ち溢れていると思います。いつの機会にか、またこの分野の情報をみなさまと共有できることを楽しみにしております。

 令和元年度第2回講演会は 11月1日に【塗装技術におけるセンシング情報のボトムアップと活用〜AI、解析・予測・評価技術の実展開〜】を第1回と同じく日本ペイントホールディングス株式会社東京事業所センタービルAホールで開催いたします。新たな知見や有用な適用事例などがみなさまこれからに役立てられることと思います。是非お越しいただけますようお願いします。

日本塗装技術協会 セミナー委員会
実行委員長 山口 賢之

講演会場

主催日本塗装技術協会  
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本防錆技術協会表面技術協会日本自動車車体工業会
日本塗装機械工業会日本工業塗装協同組合連合会日本塗料工業会
日本塗料検査協会高分子学会自動車技術会
材料技術研究協会静電気学会日本印刷学会
粉体工学会日本金属学会腐食防食学会
日本建築仕上学会日本粉体工業技術協会日本レオロジー学会
日本油化学会国際工業塗装高度化推進会議

 
期日2019年 7月 12日(金) 10:20〜16:45
会場日本ペイントホールディングス株式会社 東京事業所 センタービルAホール
東京都品川区南品川4−1−15

参加費日本塗装技術協会 及び協賛学協会 会員16,200円
非会員21,600円
学生参加者3,240円

プログラム

10:20〜10:30 開会の挨拶とガイダンス    日本塗装技術協会 セミナー委員会
10:30〜11:30 「ディスプレイ用ぎらつき抑制アンチグレアコーティング剤の開発動向とぎらつきの定量化手法」
日本化工塗料株式会社 高機能性材料部 清水 大介
アフロディ株式会社 代表取締役CEO 嶋 秀一
概要:
外光の映り込みを緩和するためタッチパネルは、防眩(アンチグレア)フィルムを使用することがある。近年アンチグレアフィルムに塗布されたコーティング膜と画素解像度の関係でおきる光干渉による“ぎらつき”が問題視されるようになった。アンチグレアコーティング剤とぎらつきの関係を測定手法とともに技術解説する。

11:35〜12:35 「耐熱塗料の解説と開発動向」
オキツモ株式会社 塗料事業部 技術部 課長 森長義博
概要:
熱負荷を受ける部品には様々な耐熱塗料が使用されるが、本講演ではシリコーン樹脂をベースとした耐熱塗料をはじめとし、さらにゾルゲルプロセスを応用し有機成分の含有量を低減した熱安定性に優れた耐熱塗料について解説する。また最新の耐熱塗料の応用例として、耐熱ソルダーレジストインキを紹介する。

昼食休憩(60分間)
13:35〜14:35  「塗膜開発を支える非破壊検査技術」
東芝ナノアナリシス株式会社 技術本部 参事 照井 裕二
概要:
東芝ナノアナリシス株式会社は、受託分析サービスを行っており、その中に3次元X線顕微鏡(以下X線CTと呼ぶ)がある。そのX線CTにて、種々の工業製品の観察・分析を行っており、今回は、そのX線CTによる塗膜をはじめに各種工業製品の観察事例を紹介する。

14:40〜15:40 「電子線の工業利用の現状と今後の展望」
住重アテックス株式会社 新規事業室 主席技師 山瀬 豊
概要:
電子線の工業利用として、表面処理、塗装等キユアリング、架橋、グラフト重合、分解利用等の各素材の電子線による機能性向上の事例を中心に紹介解説する。

休憩(15分間)
15:35〜16:45 「自動車電装部品向け機能性UVハードコート」
日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社 プラスチック塗料技術部
新市場 FPD用塗料グループ グループマネージャー 小林 和人
概要:
CASE、MASS、ADASと車を取り巻く環境は変わり、塗膜に求められる機能やその工法にも変化が求められている。
本講演では、車に搭載されるディスプレイ、センサーにフォーカスを当て、これら電装部品に求められる機能及び意匠を両立させる技術、またそれを実現させる加工プロセスについて紹介する。

17:00〜18:00 交流会(名刺交換会) 於:2階 食堂 


Copyright(C); 2006, Japan Coating Technology Association. All Rights Reserved.