プログラム

<講演会報告>

2021年度(令和3年度)第2回講演会を終えて

 2021年11月12日に「コーティングにおけるSDGsの考え方とアクティブなアプローチを目指して」〜 量産ラインのスマート化とエネルギーロス低減技術の紹介 〜と題した第2回講演会を開催いたしました。日本塗装技術協会では、塗料・塗装に携わる技術者・研究者を対象に情報の発信・交流の場を提供していますが、コロナ感染防止を考慮し昨年度よりウエビナー形式にてオンラインでの講演会を開催しております。第2回講演会は、41名の聴講者にご参加いただき、塗装・塗料技術に関する活発な議論・情報交換の場となりました。また、講師の方々におかれましては、ご多忙のところ執筆・ご講演と多大なるご協力を賜りましたこと、この場をお借りしまして改めて御礼申し上げます。
 「持続可能な開発目標:SDGs」に対応すべく、産業界においても「地球保護」や「産業と技術革新の基盤づくり」のために様々な活動がなされております。特に塗料・塗装業界においてはCO2発生も含めてVOCなど環境負荷物質の低減、塗料の焼付硬化時のエネルギーの低減やエネルギー再利用、更には、サステナブルへの貢献を目指した機能性塗料の開発などに取り組まれていることと思います。このような昨今の状況から、本講演においては塗料・塗装業界におけるSDGsに向けた開発や取り組み事例を各講師よりご紹介いただきました。

第1講演は、「コーティングス事業とサステナビリティ」との題目で、BASFジャパン株式会社 コーティングス事業部 自動車塗料部 マネージャー 江森野歩様よりご講演頂きました。該社において取り組まれているカーボンマネージメントプログラム、サーキュラーエコノミープログラムを通したCO2削減活動、持続可能な塗料・塗装技術、その他サステナビリティ活動が紹介されました。特に、社会にもたらす価値を数値化して、人々の生活に与える影響を評価する手法を検討されている点など、皆様が取り組まれているSDGsに向けた活動の参考になったものと思います。

第2講演は、「エレクトロスプレー技術を用いた高塗着効率塗布システム」との題目で、アネスト岩田株式会社 コーティングシステム部 EAC技術センター 柿崎翔志様によるご講演でした。SDGsに向けた自社での活動内容、及び塗着効率向上のメリットを説明された上で、新しい霧化方式の採用により高塗着効率を達成した塗装技術「EAコーティング」について、その原理と特徴を紹介頂きました。様々な被塗物に対する塗装実演動画を交えての紹介は、幅広い分野での適用の可能性を示唆された内容で、大変興味深いものでした。

第3講演は、「低エネルギー電子線照射装置の原理と利用例」との題目で、株式会社アイ・エレクトロンビーム 代表取締役社長 木下忍様よりご講演頂きました。無溶剤での塗装も可能となる紫外線(UV)・電子線(EB)硬化塗料は、VOCやCO2削減の有効な手段として期待される技術であります。今回のご講演では、EB装置からのEB発生原理や最近のEB装置の動向、これらの利用例をわかりやすくご紹介頂きました。講演後の質疑応答においても、実用化を意識した質問が多く、電子線硬化はSDGsに向けて期待されている技術であることを改めて感じる内容でした。

第4講演は、「排熱回収システムを中心とした慨UBARU様塗装工場向け                     エネルギーサービスご提供事例の紹介」との題目で、日本ファシリティ・ソリューション株式会社 産業ES推進室 沢崎拓史様と遠藤雅志様より、自動車工場のエネルギー消費の過半を占める塗装工程で排出される多くの熱を回収して再利用する新しいシステムについてご講演いただきました。塗装工程において発生する熱エネルギーの問題は、塗装工程のSDGsを達成する上で避けては通れない問題の一つであり、これに携わる塗料・塗装技術にとって大いに役立つご講演でした。

第5講演は、「環境負荷低減船底防汚塗料"FASTAR"」との題目で、日本ペイントマリン株式会社 技術本部 研究開発部 富山宗一郎様による、船舶の船底に付着する海洋生物付着防止技術を通した船舶の燃費向上に役立つ機能性塗料に関するご講演でした。銅イオンなどの防汚成分を塗膜表層に安定的に露出させるために、加水分解型防汚塗料に親水部と疎水部をナノレベルで制御したナノドメイン構造を採用した技術を紹介して頂きました。本講演を通して、塗料を高機能化することでSDGsに貢献することも塗料・塗装技術者の責務の一つであることを感じさせられました。

 今回の講演会では、聴講者の方々からの質問も多数あり、ウェブ講演会でしたが活発な議論がなされたものと感じております。これは塗料・塗装技術に関わる皆様の「持続可能な開発目標:SDGs」に対する関心の高さを表しているものであり、聴講者の方々にもご満足をいただけた内容になったものと確信しております。日本塗装技術協会は、これからも委員一同、日々の皆さまの技術活動に少しでも貢献できるような話題を提供していきたいと考えております。

次回の講演会は、2021年度第3回講演会「進化する 自動車 塗装技術」〜デザイン、生産技術、環境への最適化の取り組みと革新 〜と題して、2022年2月18日(金)にオンライン開催致します。
塗装技術協会セミナー委員一同、皆様のご参加をお待ちしております。

令和3年度 第2回講演会
実行委員長 植田 浩平

主催一般社団法人日本塗装技術協会  
協賛日本化学会色材協会日本塗装工業会
日本塗装機械工業会高分子学会日本工業塗装協同組合連合会
日本自動車車体工業会日本防錆技術協会材料技術研究協会
日本レオロジー学会日本印刷学会日本建築仕上学会
日本塗料検査協会日本油化学会腐食防食学会
自動車技術会静電気学会日本粉体工業技術協会
国際工業塗装高度化推進会議エポキシ樹脂技術協会

 
期日2021年 11月 12日(金) 10:00〜16:00
会場オンライン開催

参加費日本塗装技術協会及び協賛学協会会員16,500円
非会員22,000円
学生参加者3,300円

プログラム

10:00 開会の挨拶とガイダンス    日本塗装技術協会 第2回講演会実行委員長
10:10〜11:10 「コーティングス事業とサステナビリティ」
No.1 BASFジャパン株式会社 コーティングス事業部
自動車塗料部 マネージャー 江森 野歩
概要:
SDGs、ネットゼロ、サーキュラーエコノミー、ライフサイクルアセスメント、カーボンフットプリント、等々のサステナビリティに関連する単語を耳にする機会が多くなっている。中でも自動車業界は「100年に一度の大変革の時代」を迎えていると言われており「サステナビリティ」は、確実にその変革要因の一つになっている。コーティングス事業に携わる一企業、あるいは一化学企業として、今後の方向性や展望につき実例を交えて紹介する。

休憩(5分)
11:15〜12:15  「エレクトロスプレー技術を用いた高塗着効率塗布システム」
No.2 アネスト岩田株式会社 コーティングシステム部 EAC技術センター 柿崎 翔志
概要:
塗着効率は塗布において重要な要素であり、塗着効率が低い分だけ霧化や排気等で余計にエネルギーを消費する。特に微細なワークでは塗着効率が低く、この問題が顕著となる。
今回紹介するEAコーティングは静電噴霧方式を採用しており、少流量で高塗着効率であるため、微細なワークにおける上記問題への有効な手立てとなると考えている。

昼食休憩(60分間)
13:15〜14:15 「低エネルギー電子線照射装置の原理と利用例」
No.3 株式会社アイ・エレクトロンビーム 代表取締役社長 木下 忍
概要:
SDGs達成<VOC (CO2) 削減を含む>の有効な手段として考えられる塗膜硬化方法として、無溶剤塗料による紫外線(UV)・電子線(EB)硬化が挙げられる。演者は装置メーカーの立場から装置および応用開発に携わってきた。そこで、その有効性をEB装置からのEB発生原理やUV,EBの塗膜硬化原理(比較)を含む基礎と最近の装置の動向および利用例を紹介し、解説する。

休憩(5分)
14:20〜14:50 「排熱回収システムを中心とした慨UBARU様塗装工場向けエネルギーサービスご提供事例の紹介」
No.4 日本ファシリティ・ソリューション株式会社
産業ES推進室 沢崎 拓史・遠藤 雅志
概要:
エネルギーサービスは事業者が省エネ等の専門性を生かしユーティリティ設備の企画、設置、維持運用までを一貫して行うサービスである。
本講演では、自動車工場のエネルギー消費の過半を占める塗装工程で多くの排熱が出ることに着目し排熱回収システム導入によりエネルギー消費量を大きく削減した事例を紹介する。

休憩(5分)
14:55〜15:55 「環境負荷低減船底防汚塗料"FASTAR"」
No.5 日本ペイントマリン株式会社 技術本部 研究開発部 富山 宗一郎
概要:
船舶の環境保全にとっては、船底への生物付着の抑制が重要であり、船底防汚塗料はその役割を担っている。各防汚塗料メーカーは防汚機能に加えて付加機能を持たせた塗料の開発改良を行っている。本講演では、弊社の防汚塗料への取り組みと低燃費技術および技術のポイントとなる親水疎水ナノドメインの形成による低溶出と防汚性を両立した環境負荷低減船底防汚塗料"FASTAR"を紹介する。


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