プログラム

<講演会報告>

2022年度 第2回講演会を終えて

 2022年度 第2回講演会を「塗料塗装分野の評価の数値化とDXを目指して」塗装と評価〜数値化、デジタル化、プロセス管理〜と題しまして、11月18日にウエビナー形式にてオンライン開催致しました。塗装とその評価における数値化、デジタル化は、品質問題解決、低コスト化、環境負荷低減を実現する今後の重要なアイテムです。また、更なる競争力強化のためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速する必要があります。本講演会では、画像センシングへのAI活用、視覚的評価技術、塗装欠陥の測定方法、塗装ラインのIoT化、VR空間での塗装シミュレーションの最先端技術をご紹介いただきました。講師の皆様におかれましては、ご多忙の中、執筆・ご講演と多大なるご協力を賜りましたことをこの場をお借りして改めて厚く御礼申し上げます。

 第1講は「画像センシングの基盤とAIによる高度化技術」と題しまして、慶應義塾大学 理工学部 教授 斎藤英雄様より、カメラ等の画像センサにより撮影された対象の形状や意味等を計測・認識するための画像センシング(コンピュータビジョン)、AIの画像センシングにおける活用事例についてご講演いただきました。
 機械学習のひとつの手法である深層学習により画像センシングは急速な進歩を遂げており、今後の塗装評価の発展にもつながる要素技術として大きな期待を持ちました。

 第2講は「粉体塗料、自動車内装の総合評価装置spectro2profiler」と題しまして、ビックケミー・ジャパン株式会社 ガードナー測定器部 部長 永江勇二様より、粉体塗料や自動車内装のシボ等のテクスチャーがある塗装表面の総合評価装置についてご講演いただきました。
 1台の装置に色、光沢、2D反射率、3D形状の測定技術を搭載し、目視との相関を取る新しいアプローチです。見たままの色、質感、光沢を数値化する重要な取り組みだと思います。

 第3講は「塗装欠陥見本とその「ものさし」の標準化」と題しまして、コニカミノルタ株式会社 外観計測事業推進部 グループリーダー 吉田龍一様より、自動車の塗装欠陥を自動検知する装置、欠陥サイズの測定法についてご講演いただきました。
 様々な高さ(傾き)、形状の欠陥は、これらの因子が検知する陰影に影響するため、目視に変わる「ものさし」、設計・再試作可能な「欠陥見本」を提案、企画化活動に取り組まれています。今後の進展が期待されます。

 第4講は「塗装ラインのIoT化を実現するBDACS®エッジコンピューティング」と題しまして、株式会社バルクケミカルズ・ジャパン 代表取締役 手嶋律夫様より、化成処理、電着塗装ラインのインターネット管理システムについてご講演いただきました。
 このシステムは前処理、水洗、塗装、焼付等の各単位プロセスのデータベースシステムをエッジコンピューティングにより構築し、それらをネットワークでつないで全体を管理するコンセプトであり、熟練技能、ノウハウをできるところから少しずつデジタル化することができる有用な手段であると思います。

 第5講は「VRシミュレーターによる塗装教育のDXについて」と題しまして、株式会社ブロードリーフ 特販部 課長 吉田幸徳様より、塗装教育にVR(バーチャル リアリティ)を用いた塗装シミュレーションについてご講演いただきました。
 このVR塗装シミュレーターは、ガンの軌跡、角度、距離、速度等によって結果がスコア化(数値化)され、その場で自己改善することで効率良く技能習得でき、さらに実際に塗料を用いることがないため低環境負荷の画期的な方法だと思います。今後の適用拡大が期待されます。

 本講演会の情報が少しでも参加いたただいた皆様の役立つものとなれば幸いに存じます。また、アンケートにご協力いただき誠にありがとうございました。皆様のご意見は今後の講演会の企画、運営に役立てて参ります。

次回の講演会は、2022年度 第3回講演会「塗装業界のカーボンニュートラルへの挑戦」 〜自動車塗装システムでの試み〜を2023年2月3日(金)にオンライン開催致します。
塗装技術協会セミナー委員会一同、皆様のご参加を心よりお待ちしております。

2022年度 第2回講演会
実行委員長 莊司浩雅(日本製鉄梶j

主催一般社団法人日本塗装技術協会  
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本塗装機械工業会高分子学会日本工業塗装協同組合連合会
日本自動車車体工業会日本防錆技術協会材料技術研究協会
日本レオロジー学会日本印刷学会日本建築仕上学会
日本塗料検査協会日本油化学会腐食防食学会
自動車技術会静電気学会日本粉体工業技術協会
国際工業塗装高度化推進会議エポキシ樹脂技術協会

 
期日2022年 11月 18日(金) 09:50〜16:15
会場オンライン開催(ZOOM)

参加費日本塗装技術協会及び協賛学協会会員16,500円
非会員22,000円
学生参加者3,300円

プログラム

09:50 開会の挨拶とガイダンス    日本塗装技術協会 第2回講演会実行委員長
10:00〜11:00
(Q&A含む)
「画像センシングの基盤とAIによる高度化技術」
No.1 慶應義塾大学 理工学部
教授 斎藤 英雄
概要:
本講演では、カメラ等に撮影された物体やシーンに関する様々な情報を計測・認識する「画像センシング」の基本的な方法論について述べる。そして、この10年間に大きく進化を遂げたAIの画像センシングにおける活用事例を紹介し、工業製品等の外観検査・計測技術の高度化に向けた可能性について展望する。

休憩(5分)
11:05〜12:05
(Q&A含む) 
「粉体塗料、自動車内装の総合評価装置spectro2profiler」
No.2 ビックケミー・ジャパン株式会社 ガードナー測定器部
部長 永江 勇二
概要:
粉体塗装や自動車内装のシボの評価において、現状の測色、光沢測定では目視と相関を取る事は出来ない。この問題を解決するためにBYK-Gardner GmbHが開発した新しい測定装置、spectro2profilerを紹介する。

昼食休憩(55分間)
13:00〜14:00
(Q&A含む)
「塗装欠陥見本とその「ものさし」の標準化」
No.3 コニカミノルタ株式会社
外観計測事業推進部
グループリーダー 吉田 龍一
概要:
自動車塗装欠陥の検査機の実用化が始まっている。しかし顧客と検査機メーカーで目合わせをするサンプルは手作りであり、欠陥の大きさは目視が基準である。そこで我々は目的形状に製作可能な「欠陥見本」を考案し、その大きさについて、新たな「ものさし」を提案した。今後、業界に呼びかけて、この標準化を目指している。

休憩(5分)
14:05〜15:05
(Q&A含む)
「塗装ラインのIoT化を実現するBDACSエッジコンピューティング」
No.4 株式会社バルクケミカルズ・ジャパン
代表取締役 手嶋 律夫
概要:
バルクケミカルズ・グループでは20年以上前から顧客の前処理ラインにBDACSと名付けたIoT プロセス管理システムを多数導入している。そのノウハウを生かし、一般的なクラウドコンピューティングではなく独自のエッジコンピューティング手法により、既存の塗装ラインに低予算で IoT 化を実現した事例をご紹介する。

休憩(5分)
15:10〜16:10
(Q&A含む)
「VRシミュレーターによる塗装教育のDXについて」
No.5 株式会社ブロードリーフ 特販部
課長 吉田 幸徳
概要:
人材不足や環境問題への対応は塗装業界においても共通の課題となっており、これらの課題解決に向けた取り組みとしてVRシミュレーターの活用が注目され始めている。「見て覚える」「体で覚える」方法をVRによってデジタル化・数値化することで、技術習得期間短縮と環境負荷軽減を実現する方法を紹介する。


Copyright(C); 2006, Japan Coating Technology Association. All Rights Reserved.