プログラム

<講演会報告>

2022年度(令和4年度)第3回講演会を終えて

 2023年2月3日に「塗装業界のカーボンニュートラルへの挑戦」?自動車塗装システムでの試み?と題した講演会を、コロナウイルス感染防止を考慮し前回に引き続きZOOMによるオンラインのウエビナー形式にて行いました。当日は100名のご参加をいただき盛況な講演会となったことに厚く御礼申し上げます。

 毎年この時期の講演会は自動車関連の講演を企画しておりますが、現在最も注目度の高い話題の1つである、カーボンニュートラルへの取り組みに関連する話題をご提供いただけることになりました。講師の方々におかれましては、ご多忙の中資料のご準備からご講演まで多大なるご協力を賜りましたこと、この場を借りまして改めて御礼申し上げます。

 第1講演は「水性塗料の技術動向と環境対応への今後の課題」と題しまして、関西ペイント株式会社 研究開発部門 技術開発本部第1部 担当次長 西澤 安明 様よりご講演頂きました。水性塗料についてわかりやすく解説していただき、現在の課題と今後の発展について理解が深まる講演でした。設備関係の参加者の方から「塗料の性質について大変勉強になった」とのコメントをいただきました。

 第2講演は「自動車用少風量ブースの開発」と題しまして、株式会社 大気社 塗装システム事業部 岩切 広志 様よりご講演頂きました。自動車用少風量ブースi-LAVE(innovative-Low Air Volume Booth)の開発プロセスをご紹介いただき、解決方策を確認するための気流シミュレーション検証の実施と実機での可視化検証まで動画も交えて解説していただきました。参加者の方からも「動画を使い視覚に訴えて、非常に判り易く、さらに中身も濃い、いい講演でした」とのコメントをいただきました。

 第3講演は「自動車塗装におけるCO2とVOCを 同時削減するVOC回収技術」と題しまして、マツダ株式会社 技術本部 車両技術部 塗装技術グループ マネージャー 河瀬 英一 様よりご講演頂きました。問題解決のため乾燥炉のモデル分析を実施し、多くの要因が関係する結果を、質量やエネルギー式によるモデルベースで予測する手法から大胆な構想を立案できたこと、そして実際に生産設備へ適用する前に慎重な検証を繰り返してしていった過程をご紹介いただきました。多くの参加者の方々から「目からうろこでした。VOCは、焼いて処理するものだと思い込んでいたので、 思い込みを無くした自由な発想が必要だと思いました。」「簡便な手法で評価システムを構築し実ラインに設備を導入されていて驚きました」「チャレンジし続けた事が素晴らしい」など感動のコメントをいただきました。

 第4講演は「魅力意匠を維持しつつCO2削減可能なBody/BMPR低温 一体塗装」と題しまして、日産自動車株式会社 車両計画・車両要素技術開発本部 車体技術開発部 塗装・防錆技術開発グループ 二又 洸太 様よりご講演頂きました。オーブン温度を下げ一体塗装を成立させるための塗料開発で、ボディ用とバンパー用で異なる要求性能を両立させていく過程や、オーブンの改良、工程管理の改善といった積み重ねで、目標としたCO2削減だけでなく、当たり前品質の維持や、魅力的な意匠の提供まで全てを達成させた取り組みをご紹介いただけました。参加者からは「材料・工法などいろいろな角度からのアプローチについて学べました」「低温一体塗装を導入する着目点に関して非常に参考になりました」といった感謝のコメントをいただけました。

また質疑応答を含めた講演会全体につきましても、「競合、協業関係などお互いの立場を越えて、技術的な内容だけでなく、ものづくりに対する考え方、企業風土への好意的な意見交換が行われているのが、非常に印象的でした」というコメントや「塗料メーカー様・設備メーカー様、そして自動車メーカー様、といった自動車を製造するうえで欠かせない関係者が集まって様々な知見や見解をご講演いただき、技術者として非常に刺激を受けました。 ご質問の中でありました『世界の地球温暖化を止めるためには・・・』といった言葉にもありますように、自動車メーカー限らず全業界が一丸となって取り組んでいくべきテーマであると改めて強く感じることができた時間でした」といった感謝のお言葉をいただき、大変嬉しく思っております。今後も日々の皆さまの技術活動に少しでも貢献できるような話題を提供していきたいと考えております。

 アンケートにお寄せいただいている内容につきましては、委員各位が目を通しております。今回も一部の講演で音声が聞き取りにくかったなどのご意見もいただき、今後の対処方法を検討しております。
 次回の講演会は、工業塗装をテーマにして企画を進めており、2023年6月9日(金)にオンライン開催を予定しております。
 日本塗装技術協会セミナー委員一同、皆様のご参加をお待ちしております。

令和4年度 第3回講演会
実行委員長 若井 宏平

主催一般社団法人日本塗装技術協会  
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本塗装機械工業会高分子学会日本工業塗装協同組合連合会
日本自動車車体工業会日本防錆技術協会材料技術研究協会
日本レオロジー学会日本印刷学会日本建築仕上学会
日本塗料検査協会日本油化学会腐食防食学会
自動車技術会静電気学会日本粉体工業技術協会
国際工業塗装高度化推進会議エポキシ樹脂技術協会

 
期日2023年 2月 3日(金) 10:50〜16:15
会場オンライン開催(ZOOM)

参加費日本塗装技術協会及び協賛学協会 会員16,500円
非会員22,000円
学生参加者3,300円

プログラム

10:50 開会の挨拶とガイダンス 日本塗装技術協会 第3回講演会実行委員長
11:00〜12:00
(Q&A含む)
「水性塗料の技術動向と環境対応への今後の課題」
No.1 関西ペイント株式会社
研究開発部門  技術開発本部第1部
担当次長 西澤 安明
概要:
環境配慮型塗料として、水性塗料は分野を問わず世界的に導入されつつある。 一方、CO2排出量削減の観点から、塗装の省工程システムも進化・拡大している。
本講座では、自動車塗料を中心に水性塗料、省工程システムの具体例について解説する。

昼食休憩(60分間)
13:00〜14:00
(Q&A含む) 
「自動車用少風量ブースの開発」
No.2 株式会社 大気社
塗装システム事業部
岩切 広志
概要:
当社の主力設備である塗装ブース設備稼働によるCO2排出量は、自動車塗装工場全体で排出されるCO2のおよそ50%を占めております。近年高まっている地球環境負荷低減へ貢献できる技術としてブース給気量を削減し、同時にCO2排出量削減可能な少風量ブース「i-LAVB」を開発しました。

休憩(5分間)
14:05〜15:05
(Q&A含む)
「自動車塗装におけるCO2とVOCを 同時削減するVOC回収技術」
No.3 マツダ株式会社
技術本部 車両技術部 塗装技術グループ
マネージャー 河瀬 英一
概要:
マツダは、クルマのライフサイクル全体でのCO2排出削減に取り組んでいる。今回塗装乾燥工程に関して、燃焼処理を伴わないVOC回収技術を開発し、大気汚染物質の放出ゼロを実現するとともに大幅なCO2削減を達成した。今回開発技術の原理と効果および今後の課題について報告する。

休憩(5分)
15:10〜16:10
(Q&A含む)
「魅力意匠を維持しつつCO2削減可能なBody/BMPR低温一体塗装」
No.4 日産自動車株式会社 車両計画・車両要素技術開発本部
車体技術開発部 塗装・防錆技術開発グループ
二又 洸太
概要:
CO2排出量の低減・削減が地球規模での課題となっている中、2020年 政府から2050年までに温室効果ガス排出量を0にする方針が発表された。そこでCO2排出量0に向けて 塗装焼き付けオーブン由来のCO2排出量削減を進めてきた。本報では, Body/BMPR低温一体塗装の開発、特に魅力意匠を落とさず、約25%のCO2排出量削減出来たため、技術詳細を報告する。

16:10〜16:15 閉会の挨拶と今後のご連絡


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