プログラム

<講演会報告>

2023年度 第1回講演会を終えて

 2023年6月9日に「工業用塗装の最新技術動向 -実践可能な環境対応技術の探索-」と題した講演会を、ZOOMによるオンラインのウエビナー形式にて行いました。当日は91名と多くの皆様にご参加いただきましたこと、厚く御礼申し上げます。

 今回の講演会では、これまでの講演会と少し方向性を変え、「工業用塗装」にフォーカスし関連する話題のご提供をいただきました。講師の皆様におかれましては、ご講演直前までご準備に尽力いただき、当日のご講演にとどまらず、質疑への後日回答と、多大なるご協力を賜りましたことを重ねて御礼申し上げます。

当日の様子をご紹介いたしますと、

 第1講演は「東海道新幹線水性塗料の導入」の題にて、東海旅客鉄道株式会社 浜松工場長 杉山 尚之 様よりご講演頂きました。新幹線という大きな被塗物に対し、水性塗料導入における課題や対策に包括的に解説していただき、難題に関係者が一体となり取り組んだ成果が伝わってくる講演でした。質問は時間内に収まらず、塗料から設備関係まで多岐にわたったことからも、各方面からの関心の高さがうかがい知れる講演となりました。まさに実務に直結する知見共有が活発に行われたと言える素晴らしいご講演でした。

 第2講演は「SDGsに対応した自動塗装システムの開発動向」の題にて、旭サナック株式会社 塗装機械事業部 渡邉 将行 様よりご講演頂きました。作業時間や塗着効率を改善する「丸吹きエア静電自動ガン」の特性や塗装データを丁寧に解説いただき、粉体塗装システムにおいては、塗装時の補正工程を低減するポイントを図や動画も交え、視覚に訴えて判り易く解説されておられました。「どのような最新塗装技術があるか把握できたのでよかった」との参加者のお言葉も頂戴できました。

 第3講演は「効率的乾燥硬化における展望と課題」の題にて、ドライングシステム株式会社 装置開発部 伏見 邦博 様よりご講演頂きました。中遠赤外の輻射伝熱を塗装乾燥に用いるためのポイントを、技術の生い立ちから現在トライアンドエラーにある最新知見までご解説頂きました。参加者のコメントでは、「高速乾燥機は非常に興味深かった」「当社でもトライしてみたい」など、導入に向けた関心が示されており、今後の展開が楽しみなご講演でした。

 第4講演は「塗装乾燥分野におけるカーボンニュートラル実現への取組」の題にて、株式会社ヒートエナジーテック 生産統括本部 藤田 淳一 様よりご講演頂きました。カーボンニュートラルに向けた長期的な切り札となり得る水素バーナーですが、水素特有の課題を解決するための開発過程をご解説されており、こちらも導入を進めるステップを踏み出した技術として大変ホットな話題をご提供いただけました。安全やコストに関する質問にも丁寧かつ具体的にお答えいただき、乾燥炉の新展開を感じさせるご講演でした。

 第5講演は「工業用途におけるインクジェットの現状と将来展望について」の題にて、株式会社トライテック 代表取締役 高橋 一義 様よりご講演頂きました。インクジェットの基本原理や、コスト特性、適応対象の量的・質的限界も含め率直にご解説されており、初めてインクジェット塗装に触れる方にもわかりやすい内容となっていました。凹凸のある立体物へのインクジェット塗装適応には、「ヘッド技術をはじめとして、従来とはオーダーの異なる技術革新が必要」との見解も示されておられました。現状の技術課題とともに、将来的には、通常塗料による塗装との役割分担のようなビジョンを感じ取ることができ、大変有意義なご講演でした。

本講演会の情報が少しでも参加いたただいた皆様の役立つものとなれば幸いに存じます。また、アンケートにご協力いただき誠にありがとうございました。Formsの改善を含め、皆様のご意見は今後の講演会の企画、運営に役立てて参ります。

次回の講演会は、2023年度 第2回講演会として海外の塗料・塗装の動向を含むセミナーを企画中でございます。2023年11月17日(金)にオンライン開催の予定です。
日本塗装技術協会セミナー委員会一同、皆様のご参加を心よりお待ちしております。

2023年度 第1回講演会
実行委員長 河野 友浩
(日本ペイントコーポレートソリューションズ梶j

主催一般社団法人日本塗装技術協会  
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本塗装機械工業会高分子学会日本工業塗装協同組合連合会
日本自動車車体工業会日本防錆技術協会材料技術研究協会
日本レオロジー学会日本印刷学会日本建築仕上学会
日本塗料検査協会日本油化学会腐食防食学会
自動車技術会静電気学会日本粉体工業技術協会
国際工業塗装高度化推進会議エポキシ樹脂技術協会

 
期日2023年 6月 9日(金) 09:50〜16:15
会場オンライン開催(ZOOM)

参加費日本塗装技術協会及び協賛学協会 会員16,500円
非会員22,000円
学生参加者3,300円

プログラム

09:50 開会の挨拶とガイダンス  日本塗装技術協会 第1回講演会実行委員長
10:00〜11:00
(Q&A含む)
「東海道新幹線水性塗料の導入」
No.1 東海旅客鉄道株式会社 浜松工場
工場長 杉山 尚之
概要:
JR東海浜松工場では、新幹線車両の検修ラインリニューアル工事(2017完了)に合せ、環境に配慮した塗装の水性化に取り組み、塗料選定、塗装方法及び設備仕様を整理し、検証試験を経て水性塗料を導入した。今回、導入経緯、諸課題の解決について発表する。

休憩(5分)
11:05〜12:05
(Q&A含む) 
「SDGsに対応した自動塗装システムの開発動向」
No.2 旭サナック株式会社 塗装機械事業部
技術開発部 塗装技術センター ソフト開発課
課長 渡邉 将行
概要:
SDGsへの取り組みにおいて、各企業には経済発展のみならず、地球環境改善に繋がる企業活動が求められている。塗装機械メーカーである当社にとっては、環境対策を実現できる塗装機械・システムをお客様に提供することが使命となる。今回、SDGsを切り口とした当社の取り組みについて紹介する。

昼食休憩(55分間)
13:00〜14:00
(Q&A含む)
「効率的乾燥硬化における展望と課題」
No.3 ドライングシステム株式会社 装置開発部
部長 伏見 邦博
概要:
高速乾燥で効率的に乾燥硬化を行うという事は省エネルギー省スペースという観点から見ると時代のニーズに相応していると考える。
実際にはそのメカニズムから効果を得るためには目に見えないキュアリング状況を確認しながら進めて行く必要があり、今回の講演ではそのプロセスをお伝えしながらシステム構築を皆様と目指していきたい。

休憩(5分)
14:05〜15:05
(Q&A含む)
「塗装乾燥分野におけるカーボンニュートラル実現への取組」
No.4 株式会社ヒートエナジーテック 生産統括本部 技術部
部長 藤田 淳一
概要:
塗装乾燥分野での弊社主力製品であるAH-NM型熱風発生装置の水素対応型を東京瓦斯株式会社と共同開発した。他に、水素専焼・混焼バーナーを搭載した熱風発生装置の一般受注についても開始しており、両製品の概要について紹介する。

休憩(5分)
15:10〜16:10
(Q&A含む)
「工業用途におけるインクジェットの現状と将来展望について」
No.5 (株)トライテック
代表取締役 高橋 一義
概要:
工業用途のインクジェットにおいて加飾目的が多く、物性強度アップのためプライマーやトップコートに塗料を使う事で塗料業界様も主要プレーヤーである。本件では、建材、エレクトロニクス、自動車部品の3用途で左記テーマについて動画や図を合わせて、お話させて頂きたい。

16:10〜16:15 閉会の挨拶と今後のご連絡


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