プログラム

<講演会報告>

2024年度第2回講演会 ONLINEを終えて

 2024年度第2回講演会は「未来を守る防錆技術と耐久性評価」のテーマにて、10月25日にニューノーマルな時代に即してONLINE形式で実施いたしました。はじめに講師の皆様、お忙しい中ご講演いただき誠にありがとうございました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。また、55名の方々にご参加いただきました。本講演会が、参加者皆様の一助になれば幸いでございます。
 さて、近年世界的にCOを排出させないという気運がさらに高まり、塗装・塗料の技術分野においても、これまで以上に地球環境保護のために新しい技術・工程・評価方法・コストを意識した開発に向けて各団体、各社が切磋琢磨して取り組んでいます。本講演会では、防錆、防食に加えて、耐候性・塗膜の耐久性評価に特化したテーマを挙げて、基礎研究から実際の現場・新技術に関わる分野において最前線で取り組んでおられる方々を講師に招き、ご講演いただきました。

 第1講演は、「鉄鋼を守るさびの科学とデザイン」の演題で、株式会社 京都マテリアルズ の山下 正人講師より、錆の発生メカニズム、錆の進行のプロセス、そしていかにして進行を止めるのかその根拠を実験や計算科学を交えながら、さびのデザインとそれを活用した新技術についてご説明いただきました。
 第2講演では、「高耐食性めっきと耐食性に優れるクロメートフリープレコート鋼板」と題して、日本製鉄株式会社 植田浩平講師よりご講演いただきました。世界資材における鉄の有効性から、犠牲防食、バリア型防食手法について、理論、実際の暴露、素材分析解析、耐食性に強いクロメートをフリーにするための技術についてご紹介いただき、適材適所での活用が期待できます。
 第3講演では、「自己修復性塗膜の開発とこれによる金属の防食」旭川工業高等専門学校 准教授 千葉 誠講師より、ご講演いただきました。カプセル利用によって、幅の狭い傷などに金属の露出部をその周辺のカプセルと水分が反応することで修復塗膜ができて、錆を防ぐ新しい技術でした。また、北海道特有の凍結というシーンにおいてもその効果が維持される素材も紹介いただきました。
 第4講演では、「インピーダンス測定による塗膜劣化挙動モニタリング」と題しまして、株式会社 シュリンクスの西條康彦講師より、塗膜の状態、寿命・塗り替え時期のモニタリング技術にについて、ご講演いただきました。インピーダンスという表現をグラフだけでなく絵的にわかりやすく、そしてこれまで世の中になかった新しいセンサーからの見方・考え方をご紹介いただき、これからの世代に活用できる技術を講演いただきました。
 第5講演では、「市場再現性の高い促進耐候性試験方法の開発」と題して、関西ペイント株式会社 松田 健講師より、実暴露と促進試験の側面からのアプローチについてご講演いただきました。従来の促進耐候性試験は実暴露となぜ相関しないのか。実現場の状態観察から、世界各地の地域性と劣化解析およびその要因の解析から、今後の促進耐候性のあるべき姿を示してくれたのではないでしょうか。

 講演会にご参加いただいた皆様、ご質問やご意見、アンケートにご協力いただき誠にありがとうございました。本講演会の情報が少しでも、参加いたただいた皆様の役立つものとなれば幸いに存じます。
 日本塗装技術協会では、年3回の講演を実施しております。2024年度第3回講演会は、2025年2月7日に「カーボンニュートラル時代の自動車塗装の進化に貢献するシミュレーション技術とこれを支える可視化技術」と題して、開催予定ですので、奮ってご参加いただけると幸いです。

2024年第2回講演会実行委員長
関西ペイント梶@中岡 豊人

主催一般社団法人
日本塗装技術協会
  
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本塗装機械工業会高分子学会日本工業塗装協同組合連合会
日本自動車車体工業会日本防錆技術協会材料技術研究協会
日本レオロジー学会日本印刷学会日本建築仕上学会
日本塗料検査協会日本油化学会腐食防食学会
自動車技術会静電気学会日本粉体工業技術協会
国際工業塗装高度化推進会議エポキシ樹脂技術協会

 
期日2024年 10月 25日(金) 09:45〜16:20
会場オンライン(ZOOMウェビナー)

参加費日本塗装技術協会及び協賛学協会会員16,500円
非会員22,000円
学生参加者3,300円

プログラム
講師の方の敬称は略させていただきます。

09:45 開会の挨拶とガイダンス  日本塗装技術協会 第2回講演会実行委員長
09:55〜10:55
(Q&A含む)
「鉄鋼を守るさびの科学とデザイン」
No.1 株式会社 京都マテリアルズ 代表取締役
山下 正人
概要:
インフラ構造物を構成する鉄鋼材料は腐食しやすく、塗装により防食されることが多い。しかし、一旦腐食が始まると腐食をさらに加速するさび層が形成するため、塗膜は加速度的に劣化する。本講演では、“さびの科学”に基づいたさび層特性の理解と、それらを応用しさび層の防食性を高める“さびのデザイン”を紹介する。

休憩(5分間)
11:00〜12:00
(Q&A含む) 
「高耐食性めっきと耐食性に優れるクロメートフリープレコート鋼板」
No.2 日本製鉄株式会社 技術開発本部 鉄鋼研究所
表面処理研究部 部長
植田 浩平
概要:
表面処理鋼板分野においては、めっきの高耐食化が進んでいる。特に2000年頃から、ZnめっきにAlとMgを添加したZn-Al-Mg合金めっき鋼板の開発が進められている。そこで、本講演においては、耐食性に優れるZn-Al-Mg合金めっき鋼板について解説し、更にはこれらを原板に用いたクロメートフリープレコート鋼板(塗装鋼板)の耐食性について述べる。

昼食休憩(60分間)
13:00〜14:00
(Q&A含む)
「自己修復性塗膜の開発とこれによる金属の防食」
No.3 旭川工業高等専門学校
物質化学工学科 准教授
千葉 誠
概要:
種々機構により自己修復性を付与した金属防食用塗膜の開発とこれによる金属材料の高耐食性化に関する研究について講演する。

休憩(5分間)
14:05〜15:05
(Q&A含む)
「インピーダンス測定による塗膜劣化挙動モニタリング」
No.4 株式会社 シュリンクス
西條 康彦
概要:
インピーダンス測定は塗膜の劣化評価方法として古くから研究が行われており,その有効性が認められている.多くの場合,定期的に塗膜の劣化状態を把握し余寿命診断に活用されている。本講演では,塗膜劣化挙動をリアルタイムにモニタリング可能なセンサとインピーダンス測定原理について概説する。

休憩(5分間)
15:10〜16:10
(Q&A含む)
「市場再現性の高い促進耐候性試験方法の開発」
No.5 関西ペイント株式会社 開発・調達部門
技術開発本部開発試験部 上級研究員
松田 健
概要:
光/水/熱は屋外暴露における材料劣化の3大負荷因子だが、酸/塩/ダスト等の汚染物質の影響も大きいことから、汚染負荷とキセノン促進試験による光照射を複合化した新しい促進耐候性試験法を考案した。第39回塗料・塗装研究発表会の内容を元に、屋外暴露での材料劣化における汚染物質の影響について解説する。

16:10〜16:20 閉会の挨拶と今後のご連絡


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