プログラム

<講演会報告>

2024年度第3回講演会を終えて

 2024年度第3回講演会は「カーボンニュートラル時代の自動車塗装・塗料技術の進化に貢献するデジタル技術とこれを支える可視化技術」をテーマとして、2025年2月7日にオンライン形式で実施され、68名の方々がご参加されました。講師の皆様、また参加者の皆さま、お忙しい中ご講演・ご聴講いただき誠にありがとうございました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
 近年、デジタル化の波はあらゆる分野に広がり、私たちの生活や仕事のスタイルを大きく変えています。電動化に代表される自動車技術分野にとどまらず自動車生産技術、塗装技術、材料技術分野でもAI活用の拡大、CAE技術の浸透など様々なデジタル技術の導入が進み、効率化や新たな価値創造が実現されています。本講演会ではシミュレーション・可視化・現象解明、加えて私たちには避けて通れないCO2削減・カーボンニュートラルをキーワードに、これらの分野において最前線で取り組まれている方々をお招きしご講演いただきました。
 第1講は「産学協同による塗装プロセス研究とその展開」の演題で、八戸工業大学大学院の大黒 正敏 教授より、産学協同によるベル塗装に関する様々な現象解明についての長年にわたる基礎研究と、研究成果の製造分野への適用事例をご紹介いただきました。戦前の燃料噴霧に関する研究から今日の産学協同研究に至るまでの歴史を紐解かれ、蓄積された多くの理論・知識・ノウハウは、私たちがこれらを活用するうえで心に留めておきたいことだと感じました。
 第2講では「噴霧塗装における可視化計測 計測手法とアプリケーション事例」と題して、日本カノマックス株式会社 松ア 周一郎 様よりご講演いただきました。塗装事例、主にスプレー噴霧に対する非接触式の可視化計測手法 (PIV, PTV, LDV, LIF, Mie, SLIPIなど) を数多くご紹介いただきました。可視化したい特性に合う様々なソリューションが分かりやすく解説されており、これらの技術の活用がより高度なノズル開発につながると期待できます。
 第3講では「Particleworksによる塗装解析ソリューション」と題して、プロメテック・ソフトウェア株式会社の藤枝 忠臣 様よりご講演いただきました。電着塗装工程における自動車ボディの浸漬によるエアポケット発生やボディパネルにかかる圧力予測、同じくボディの引き上げによる液持ち出し量の予測、メタリック塗装工程では塗料が塗着する際のアルミフレーク挙動の可視化、シーラー塗装工程でのビード形状予測など実践的なシミュレーション事例が多く紹介されました。講演後には多くの質問をいただき活発な議論が交わされました。
 第4講では「粉体・流体解析ソフトウェア「iGRAF」の解析機能と適用事例」と題して、株式会社構造計画研究所の青野 淳也 様より、粉粒体挙動の計算手法であるDEMを中心とした他の計算手法 (CFDやVOF、最新版ではDPMまで) との相互作用計算の実現やDEM粒子の非球形化対応などについてご紹介いただき、ひと昔前では不可能であった複雑・高度な計算手法が実用化されていることを実感できるご講演でした。
 第5講では「自動車塗装CN研究会の取り組み」と題して、マツダ株式会社の大谷 崇 様より、塗装領域における材料技術・生産技術のカーボンニュートラルの早期実現に向け、4つのワーキンググループを主体とした自動車塗装CN研究会を発足した経緯、各ワーキンググループの活動内容や最新情報についてご紹介いただきました。自動車業界だけにとどまらず、産業界全体、更には官・学も視野に入れた活動の幅広さ・深さに感心するばかりでした。
 講演会にご参加いただいた皆様、ご質問やご意見、アンケートにご協力いただき誠にありがとうございました。本講演会の情報が少しでも皆様の役立つものとなれば幸いです。
 日本塗装技術協会では、年3回の講演を実施しております。次回の2025年度第1回講演会は、2025年6月13日に「塗装技術と今後の意匠の発展を語る 〜身近に触れられる心躍るものを工業手法で造る、その過去の技術と今後の方向性〜」をテーマとして開催予定です。万障繰り合わせのうえ、ご参加くださいますようお願い申し上げます。

2024年度第3回講演会実行委員長
本田技研工業株式会社 福野 純一

主催一般社団法人
日本塗装技術協会
  
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本塗装機械工業会高分子学会日本工業塗装協同組合連合会
日本防錆技術協会材料技術研究協会日本レオロジー学会
日本印刷学会日本建築仕上学会日本油化学会
腐食防食学会自動車技術会静電気学会
日本粉体工業技術協会国際工業塗装高度化推進会議エポキシ樹脂技術協会

 
期日2025年 2月 7日(金) 09:45〜16:20
会場オンライン(ZOOMウェビナー)

参加費日本塗装技術協会及び協賛学協会会員16,500円
非会員22,000円
学生参加者3,300円

プログラム
講師の方の敬称は略させていただきます。

09:45 開会の挨拶とガイダンス  日本塗装技術協会 第3回講演会実行委員長
09:55〜10:55
(Q&A含む)
「産学共同による塗装プロセス研究とその展開」
No.1 八戸工業大学
大学院工学研究科
教授
大黒 正敏
概要:
塗装プロセスの解明を目的に2008年から始まった回転ベルカップの流動特性、微粒化特性の解明、塗料噴霧の飛行の解析、被塗装面への塗着の解析等を産学共同で行ってきた。その研究成果の概略を示すとともに、製造現場への展開についても紹介する。

休憩(5分間)
11:00〜12:00
(Q&A含む) 
「噴霧塗装における可視化計測 〜計測手法とアプリケーション事例〜」
No.2 日本カノマックス株式会社
流体計測事業部
松ア 周一郎
概要:
当社計測装置を用いた噴霧塗装における可視化技術に焦点をあて、様々な計測手法とその特徴について紹介する。また、噴霧における重要な要素である噴霧形状、濃度、液滴径、速度などの複合計測ついて、当社のアプリケーション事例を交えて報告する。

昼食休憩(60分間)
13:00〜14:00
(Q&A含む)
「Particleworksによる塗装解析ソリューション」
No.3 プロメテック・ソフトウェア株式会社
海外事業開発部
シニアアプリケーションスペシャリスト
藤枝 忠臣
概要:
粒子法に基づく流体解析ソフトウェア「Particleworks」はメッシュの生成が不要で従来手法では困難な解析を実施可能である。
今回はParticleworksによる車体電着塗装工程、シーラー塗装解析、メタリック塗料を模擬した液滴内のフレーク粒子挙動解析の事例を報告する。

休憩(5分間)
14:05〜15:05
(Q&A含む)
「塗装分野における粉体/流体シミュレーションソフトウェアの開発」
No.4 株式会社構造計画研究所
SBDエンジニアリング部
青野 淳也
概要:
株式会社構造計画では粉体/流体シミュレーションソフトウェアiGRAFの開発・販売している.新機能としてDiscrete Phase Modelと静電気力モデルを導入し,壁面付着課題、静電塗装などのプロセスの改善を提供する。またスラリーを粉体と流体でモデル化し,粘度の推算モデルを紹介する.

休憩(5分間)
15:10〜16:10
(Q&A含む)
「自動車塗装CN研究会の取り組み」
No.5 マツダ株式会社
技術本部 車両技術部 塗装技術グループ
マネージャー
大谷 崇
概要:
地球環境におけるCO2排出量の削減は最重要課題である。自動車塗装工場のカーボンニュートラル化の早期実現に向けて、日本塗装技術協会の下、2022年10月にOEM各社が集い『自動車塗装CN研究会』を設立し、自動車塗装プロセス改革の方向性について議論を重ねてきた。今回の講演においては、本研究会の活動内容について報告する。

16:10〜16:20 閉会の挨拶と今後のご連絡


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