プログラム

平成23年度第1回講演会を終えて
 

 平成23年度第1回講演会を「日本の塗装技術の底力は何か?−塗装の最新、過去、未来」というテーマで、11月11日に日本ペイント株式会社殿の東京事業所センタービルAホールにて開催いたしました。
 例年の第1回目の講演会は、通常6月に開催をしておりますが、3月11日に発生しました東日本大震災により被災された関係者の方々,企業・団体の状況を鑑み、今年度に限って11月の開催となりました。改めまして、被災者の皆様には心からお見舞い申し上げますとともに、被災地の1日でも早い復興を願ってやみません。当日は、タイの洪水問題やヨーロッパの金融不安等がくすぶる中、学生さんからベテランの方まで、60名を超える幅広い層の方々に聴講いただきました。


講演風景
 講師の方々には、高度経済成長,バブル崩壊,失われた20年,リーマンショック等の難局に何度もぶつかりながらも進歩をとげてきた日本の塗装技術についてそれぞれの視点からご講演いただきました。

第1講演:塗料の役割、特徴から見た最近の動向と近未来
日本塗料工業会 菊田眞人 講師
 これからの塗料に必要な役割についてわかり易く解説いただきました。また、海外に進出した日本の塗料メーカーの生産数量が平成22年度に初めて国内と逆転した中、海外メーカーとの競争に勝つには、日本が特意とする、すり合わせ技術を各国事情にあわせて展開することが重要になるのではないかというメッセージをいただきました。

第2講演:塗装機器・設備の現状と過去および未来像
日本塗装機械工業会 平野克己 講師
 日本の特許第1号である、堀田錆止塗料及ビ其塗法から最近の工業塗装ラインができるまでの歩み、今後の課題等について説明いただきました。また、「塗装は技術なのか?」とある方面から言われたご経験から、関連する学校や企業が連携して、塗装業界の地位向上に努めなくてはならないという熱い思いが伝わってきました。

第3講演:鉄道車両における塗装の現状と将来について
川崎重工業株式会社 山名広道 講師
 震災復興のシンボルでもある、東北新幹線の新型車両や各地の鉄道の最新塗装について解説をいただきました。工業塗装ラインにはあまり見かけない、パテ付けの映像や車両へのロボット塗装の映像は非常に興味をもって拝見しました。鉄道塗装においても自動車塗装並みの仕上がりや環境対策を追求されていることがよくわかりました。

第4講演:色彩を創造する
カシュー株式会社 小林 勇 講師
 長年のデザイン技術のご経験から、携帯電話のカラー提案について色々な観点から、実例を挙げて解説いただきました。また実際のパネルをお持ちいただき、ご講演後も参加者の方が興味を持って質問をされていました。未来の色彩として、漆などの日本の伝統を最新技術で再現することを目指されていることに感銘をうけました。

第5講演:東京スカイツリー®の建設概要と外部鉄骨の塗装
株式会社 大林組 堀 長生 講師
 世界一高い電波塔の東京スカイツリー®は、従来の防食塗装技術に加え、美観やVOCを意識した塗装仕様となっており、その採用までの検討経過を解説いただきました。鉄骨の溶接部の塗装仕様や100年を見据えた塗り替え仕様など画像などでわかり易く説明いただき、来年5月の開業を待ち遠しく感じました。
 

 講演終了後に会場2階の食堂で、交流会(名刺交換会)を実施しました。講演時間中に質問できなかった参加者が講師の方と懇談されたり、参加者同士で語り合ったりと、盛況でありました。塗装の業界発展のためにも、こういった横のつながりを持つ機会を設けることは非常に重要であると感じております。
 塗装は立派な日本の技術であると各方面から言われるようになるために、日本塗装技術協会の講演会が少しでもお役に立てればと思います。第2回講演会は、来年の2月10日 に開催いたします。ご参加お待ちしております。


実物見本による説明風景

第1回セミナー実行委員長 高林 勇

主催日本塗装技術協会
協賛日本化学会色材協会日本塗装工業会
日本防錆技術協会表面技術協会日本自動車車体工業会
日本塗装機械工業会日本工業塗装協同組合連合会日本塗料工業会
日本塗料検査協会応用物理学会高分子学会
自動車技術会材料技術研究協会静電気学会
土木学会日本印刷学会粉体工学会
日本金属学会日本建築学会日本建築仕上学会
日本鉄鋼協会日本粉体工業技術協会日本レオロジー学会
腐食防食協会日本油化学会( 順不同 )

 
期日平成23年 11月 11日(金)
会場日本ペイント株式会社 東京事業所 センタービルAホール
東京都品川区南品川4−1−15

参加者 65名
参加費(消費税込)主催、協賛学協会会員15,750円
非会員21,000円
学生参加者3,150円

プログラム

10:20〜10:30 開会の挨拶とガイダンス    日本塗装技術協会 セミナー委員会
10:30〜11:30 塗料の役割、特徴から見た最近の動向と近未来
社団法人 日本塗料工業会
部長
菊田 眞人
アウトライン :
塗料が、その機能、役割、特徴から企業、個人、行政機関などとどのような関わり合いを持っているかを最近の動向から紹介すると共に近未来の方向性を考えていく。

11:30〜12:30 塗装機器・設備の現状と過去および未来像
日本塗装機械工業会
専務理事
平野 克己
アウトライン :
塗装はあらゆる形あるものに施されるが、塗装機器・設備も産業の発展とともに変化してきた。機器・設備が発展してきた原因、背景と今後に期待される機能、役割等をエンジニアリングの視点から解説する。

昼食休憩(60分間)
13:30〜14:30  鉄道車両における塗装の現状と将来について
川崎重工業株式会社
車両カンパニー 生産本部 工作部
第一艤装課
主事  山名 広道
アウトライン :
鉄道車両における塗装の現状とお客様や社会的な要求への対応、また弊社での作業環境の改善やコストダウンなどへの対応、これらを踏まえ将来に向けての川重車両カンパニーの取り組みについて紹介する。

14:30〜15:30 色彩を創造する
カシュー株式会社
塗料事業部 技術開発部
ソフトデザインセンター
部長  小林  勇
アウトライン :
世の中のニーズ変化を敏感に察知し、常に先進的な意匠を商品化する携帯電話業界において、商品コンセプト決定からデザイン開発・量産技術確立までの事例を塗料メーカーの色彩開発担当者が報告する。また、過去・最新のカラープレゼン紹介と未来色彩について報告する。

休憩(15分間)
15:45〜16:45 東京スカイツリー®の建設概要と外部鉄骨の塗装
株式会社 大林組
技術本部 技術研究所
主席技師
堀 長生
アウトライン :
東京スカイツリー®は、634mの世界一高い電波塔を目指して建設中である。
主塔を構成する鉄骨部分の防錆塗装は、本州四国連絡橋で採用されている塗装と同等以上の防食性と耐候性に加えて、東京都内での施工であることからVOC(揮発性有機化合物)発生量の少ない塗装仕様が要求された。そこで、東京スカイツリー®に採用された重防食厚膜形ふっ素樹脂塗装について解説する。

17:00〜18:00 交流会(名刺交換会)  於:2階 食堂


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