プログラム

<講演会報告>

平成28年度第2回講演会を終えて

 日本塗装技術協会では、年3回の講演を実施しております。より多くの皆様により良い技術情報をいち早く得ていただきたいと考え企画しております。

 平成28年度の第2回講演会は、日本ペイントホールディングス株式会社東京事業所センタービルAホールをお借りして10月23日に開催致しました。

 今回は「塗装をどこまで予測できるか Part1〜塗装と数値、シミュレーション〜」と題し、シミュレーションを取り上げました。シミュレーションをするためには我々塗装関係者が接している現象を数値に置き換えなければなりません。塗装を他業界からみて「わからないもの」にしているものは何なのか、「複雑だから」でごまかし逃げる事なく、会員の皆様が日々取り組んでいる課題の解決に向けた後押しができれば・・と思い企画をさせていただきました。午前中は塗装ではない成功事例を、午後は塗装の事例を講師の方々に語っていただきました。

 最初の講演では、海洋研究開発機構で地球シミュレーションを研究開発されている大西先生をお招きしました。今どのくらいのことができているのか、計算解像度とマルチスケールというキーワードで、最も身近な天気予報の進化を支える、海洋気象観測結果の緻密なモデル化例やスーパーコンピュータの利用方法を極めて判りやすく語っていただき、聴講者に高揚感を与えてくれました。

 次の講演では、(株)電通国際情報サービスの遠藤様に御登壇いただきました。流体解析の紹介を基本的な算出方法から実例まで多く語っていただきました。専門用語が難しいと感じられた方にも、現在どのようなことがシミュレーションが可能なのか、どういう前提でシミュレーションの専門家に相談すればよいのかがわかっていただけたかと思います。

 昼休みは午後最初の講演で紹介いただく「塗装シミュレーター」の実機を展示し参加者に実際の操作を体感していただきました。筆者はドアを開けて内部の塗装作業にチャレンジしてみました。なんとか塗り残しはなかったのですが、ガン動作をためらって止めてしまった部分で膜厚過多となってしまいました。もしこれを実際の塗装でやったら後始末が大変なところでした。

 引き続き午後の最初の講演では、(株)電通国際情報サービスの西村様に御登壇いただきました。塗装シミュレーターの紹介だけではなく、VR技術の紹介もいただき、塗装でもここまで数値化ができるということを示していただきました。

 次の講演では、(株)明治機械製作所の吉野様から、スプレーガン開発における流体解析を実施し、実際に構造へ織り込んでいった事例を御紹介いただきました。

 最後の講演では「塗膜劣化の評価と判定技術の可能性」と題しまして、大日本塗料(株)の岩瀬様から、構造物における塗膜評価の現状を提示頂き、塗膜スペックを数値化することで劣化を予測しようとするオリジナリティあふれる取り組みを御紹介いただけました。

 今回の企画が今までとりあげてこなかった取り組みであり心配しておりましたが、多くの方々にご参加頂き感謝致します。また参加された皆様には、展示場や交流会での質疑応答も含め、活発な交流ができたようで胸を撫で下ろしております。

 次回の第3回講演会は「塗装をどこまで予測出来るかPart2」と題しまして、自動車関連にフォーカスしたテーマを取り上げ平成29年2月17日(金)に開催致します。多くの皆様のご参加をお待ちしております。
第2回講演会 実行委員長 (株)クリイノ創研 若井宏平


講演会 会場

主催日本塗装技術協会  
協賛日本化学会色材協会日本塗装工業会
日本防錆技術協会表面技術協会日本自動車車体工業会
日本塗装機械工業会日本工業塗装協同組合連合会日本塗料工業会
日本塗料検査協会高分子学会自動車技術会
材料技術研究協会静電気学会土木学会
日本印刷学会粉体工学会日本金属学会
日本建築学会日本建築仕上学会日本粉体工業技術協会
日本レオロジー学会腐食防食学会日本油化学会
国際工業塗装高度化推進会議

 
期日平成28年10月28日(金)
会場日本ペイントホールディングス株式会社 東京事業所 センタービルAホール
東京都品川区南品川4−1−15

参加費(消費税込)日本塗装技術協会 及び協賛学協会 会員16,200円
非会員21,600円
学生参加者3,240円

プログラム

10:20〜10:30 開会の挨拶とガイダンス    日本塗装技術協会 セミナー委員会
10:30〜11:30 「大型スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を使った最先端気象予測シミュレーション」
海洋研究開発機構 地球情報基盤センター
地球シミュレーション総合研究開発グループ 大西 領 様
アウトライン :
地球上で見られる気象・海象現象は、数千〜1万kmに渡り海水温が上昇するエルニーニョ現象から、数百?数十m程度の大きさの竜巻やビル風など、様々な大きさの構造を持っています。こうした大きさの異なる気象・海象現象を扱うことができる最先端コンピュータシミュレーションによる最新の研究や、気象・海象現象の再現とそのメカニズムについてご紹介します。

11:35〜12:35 「最新の格子ボルツマン法CFDによる流体解析の紹介」
株式会社電通国際情報サービス
オートモーティブ事業部 ソリューション企画部 マーケティングG 遠藤 正司 様
アウトライン :
最新の格子ボルツマン法による流体解析、特に水、オイルなどの自由表面を持つ液体と空気を含む二相流の解析事例を紹介いたします。
本セッションでは、スペインのNEXT LIMIT DYNAMICS社で開発された格子ボルツマン法による流体ソフトウェアXFLOWの概要と、自動車の車体、エンジン、ミッションなどへの適用事例を説明させていただきます。

昼食休憩(60分間)
展示機器・デモ
13:35〜14:35  「塗装シミュレーション技術の紹介」
株式会社電通国際情報サービス
グローバル事業推進部 部長 西村 浩行 様
アウトライン :
近年、自動車の付加価値向上の取組として塗装品質の向上に向けてシミュレーション技術やVR(Virtual Reality)技術等、IT技術の適用が進んでおります。
本セッションでは、当社のVR技術と、塗装品質の事前評価の取組としての塗装シミュレータ(SPT3D)の紹介を行います。
塗装シミュレータは、ロボットならびに手吹き塗装における膜厚分布や塗装困難個所を、製品ができる前に事前評価する技術です。

展示機器・デモ、休憩(30分間)
15:05〜15:35 「スプレーガン開発におけるCFD(数値流体力学)の活用」
(株)明治機械製作所 岡山工場
ゼロ事業 主任 吉野 和彦 様
アウトライン :
スプレーガンの開発にはスプレー現象の把握が必要ではあるが、空気は音速で噴出し無色であり、噴霧する粒子径は数十μmと小さいため、測定機器で可視化・数値化を行うのは極めて困難な作業になります。
その問題を解決する方法として、CFDを使用しスプレー現象の可視化・数値化を試みた事例を紹介いたします。

15:45〜16:45 「塗膜劣化の評価と判定技術の可能性」
大日本塗料(株) 研究部 第一グループ
防食技術チーム 課長 岩瀬 嘉之 様
アウトライン :
多くの鋼橋やプラント設備などは建設からの供用期間が長くなり、補修が急務となっています。補修においては塗膜の劣化を適切に理解すると共に、旧塗膜の健全性を如何に評価し、判定できるかが重要となります。その技術についての現状と今後の可能性を解説します。

17:00〜18:00 交流会(名刺交換会)
於:2階 食堂 
講師、講演会参加者、セミナー委員


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