プログラム

<講演会報告>

平成28年度第3回日本塗装技術協会セミナーを終えて

 平成28年度第3回セミナーは、2月17日に『塗装をどこまで予測できるかPart2〜塗装と数値、シミュレーション〜 自動車塗装を中心として』と題し、日本ペイントホールディングス株式会社殿東京事業所センタービルAホールにて開催されました。第2回とシリーズにて塗装と数値、シミュレーションについて、講師の皆様に講演頂き、お陰様で、100名強の方に参加を頂き、盛況のうちに終了する事ができました。天気予報でさえ高精度に予測できる時代、また、ちまたでは、IoT、ビッグデータ、Industry 4.0が盛んに叫ばれる中、塗装後焼き付けてからの結果事象でしか評価が出来ない塗装の現状に問題を提起し、その解決の為の糸口として、塗装での数値分析やシミュレーションの実例を御紹介いたしました。

 第1講では東京工業大学教授 天谷賢治講師から、電着塗装塗膜厚の数値シミュレーションについて、学術的にこれまで取り組んで来られた研究事例を御紹介頂きました。
 第2講では株式会社ディライト 毛利昌康講師から、第1講を受けて自動車車体における電着塗装膜厚シミュレーションの最新技術と実事例と今後の技術開発の方向性を判りやすく解説頂きました。
 第3講ではダイハツ工業株式会社 神澤啓彰、中山泰 両講師から、メタリック色の見え方を解析する上で貴重な塗膜形成過程を、大型放射光設備(SPring8)によって可視化にチャレンジし得られた世界初の映像が披露されました。塗膜収縮の動画が得られる技術が開発された事により、今後発色のシミュレーション技術への展開が期待されます。
 第4講では関西ペイント株式会社 増田豊講師から、塗色の日射反射率ρと放射率εから夏の昼と冬の朝の相当外気温度を予測さらには、塗色による夏冬の車内温度を記録し、EV車のエアコン消費電力と塗色を関係づけた解説がありました。
 第5講ではトヨタ自動車株式会社 飯田達也講師から、自動車塗装工程において、大型でエネルギー費が掛かる塗装ブースを、流体シミュレーションを活用し、新しいコンパクトで低エネルギー塗装ブースの開発過程を講演頂きました。
 第6講ではオムロン株式会社 本条智仁講師から、これからの塗装技術の発展に有用なIoT、ビッグデータ、Industry 4.0について解り易く御説明頂き、さらには、自社工場のIoT化の取組実事例や同社の考える今後の製造現場におけるデータ活用の展望について講演頂きました。このような世の中の進歩の現状に感化されて塗装技術者が奮い立つ、そんな事を期待してしまう講演でした。
 全ての講師の方々の講演が、確かな知識、技術に基づいた判り易い説明、また、現場現実現物での事例での解説であった為、参加者の理解度が大変深まり、それが、講演後の活発な質疑、セミナー終了後の交流会での講師への質問攻めへと繋がり、非常に聴講者への刺激、活性化を誘発した有意義なセミナーに成ったと感じられました。講師の皆様、聴講者の皆様誠にありがとうございました。
 最後に、塗装技術の発展には様々な課題山積ですが、第2回、第3回シリーズにて一気に塗装シミュレーション関連の講演『塗装をどこまで予測できるか』を企画しました。まだまだ塗装にとっての事足りた情報をお届けできたとは思っておりませんが、少しでも参加された皆様方の課題解決のお役にたてれば幸いです。今後も皆様方の期待に応える、いや、期待を超えるテーマ企画を提供したいと考えておりますので、是非、今後の日本塗装技術協会セミナーに参加頂けるよう宜しくお願い申し上げます。
平成29年2月17 日 第3回セミナー実行委員長 佐藤和之


講演会 会場

主催日本塗装技術協会  
協賛日本化学会色材協会日本塗装工業会
日本防錆技術協会表面技術協会日本自動車車体工業会
日本塗装機械工業会日本工業塗装協同組合連合会日本塗料工業会
日本塗料検査協会高分子学会自動車技術会
材料技術研究協会静電気学会日本印刷学会
粉体工学会日本金属学会日本建築学会
日本建築仕上学会日本粉体工業技術協会日本レオロジー学会
腐食防食学会日本油化学会国際工業塗装高度化推進会議

 
期日平成29年 2月17日(金)
会場日本ペイントホールディングス株式会社 東京事業所 センタービルAホール
東京都品川区南品川4−1−15

参加費(消費税込)日本塗装技術協会 及び協賛学協会 会員16,200円
非会員21,600円
学生参加者3,240円

プログラム

10:20〜10:30 開会の挨拶とガイダンス    日本塗装技術協会 セミナー委員会
10:30〜11:30 「電着塗装の数値シミュレーション」
東京工業大学 工学院 教授
天谷 賢治
アウトライン :
ものつくり産業の多くの場面で数値シミュレーションを援用した開発手法が取り入れられている。本講演では電着塗装の数値シミュレーションについてこれまでに講演者グループが取り組んできた研究について概説する。

11:35〜12:35 「自動車業界における電着塗装膜厚シミュレーションの最前線」
株式会社 ディライト 代表取締役
毛利 昌康
アウトライン :
自動車業界の下塗り塗装は弊社が2001年に世界で初めてリリースしたソフトから始まった。その後コンピュータ技術の大幅な進歩と価格の低下、ソフトの継続的な改良があいまって、現在は実際の塗装設計に必要なツールとなっている。日本でもほぼすべての自動車メーカーがシミュレーションを行っており、世界をリードしている。これらの歴史的発展と現状を解説し、将来の展望を示します。

昼食休憩(50分間)
13:25〜14:00  「塗装可視化へのチャレンジ <SPring8放射光を用いたX線イメージングによるメタリック塗膜形成過程観察方法>」
ダイハツ工業株式会社 生産技術部 技術企画室
主担当員 神澤 啓彰、主任 中山 泰
アウトライン :
塗装を理解する上で、現象を直接観察出来ないことが大きな障壁となる場合があり、それが「塗装はわからない」ということになりがちです。今回、色合せという課題をきっかけとして、従来可視化できていなかったメタリック色の塗膜形成過程を、大型放射光設備(SPring8)によって可視化することにチャレンジし、世界初の映像を得ることができましたので報告します。

14:05〜14:50 「塗色の遮熱と放射冷却温度を予測しEVの省エネを考える」
関西ペイント株式会社 CD研究所 特級研究員
増田 豊
アウトライン :
塗色の日射反射率ρと放射率εから建築熱工学の式を用いて夏の昼と冬の朝の相当外気温度を予測し実測値(JSTMJ6110:2003)との一致を確認した。一方、塗色のよる車内温度の夏冬を記録し、EVのエアコン消費電力を塗色と関係づけた。

休憩(15分間)
15:05〜15:40 「シミュレーションを活用した新塗装ブースの開発」
トヨタ自動車株式会社 MS塗装生技部 主任
飯田 達也
アウトライン :
自動車塗装工程において、従来の課題である大型でエネルギー費が掛かる塗装ブースを、流体シミュレーションを活用し、コンパクトで低エネルギーな新塗装ブースを開発したので紹介する。

15:45〜16:45 「IOT時代に向けたオムロンのAutomation革新」
オムロン株式会社 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 拡業推進部長
本条 智仁
アウトライン :
オムロンは、最新技術やグローバルスタンダード技術を活用しながら制御進化と共にIoT化に取組み、商品化しています。
今回は、自社工場のIoT化の取組事例や同社の考える今後の製造現場におけるデータ活用の展望について紹介いたします。

17:00〜18:00 交流会(名刺交換会)
於:2階 食堂 
講師、講演会参加者、セミナー委員


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