プログラム

<講演会報告>

平成29年度 第2回講演会を終えて

 平成29年度第2回講演会を「錆との闘い〜防錆技術の基礎と将来動向〜」と題しまして、10月27日に日本ペイントホールディングス株式会社東京事業所センタービルAホールにて実施致しました。当日は90名様を越える方々にご聴講頂き、交流会も含め大変盛況な講演会となりました。講師の方々におかれましては、ご多忙中のなか執筆・ご講演と多大なるご協力を賜りましたこと、この場を借りまして御礼申し上げます。

 第1講演は、「鋼材の大気腐食機構」と題しまして、東京工業大学物質理工学院の西方教授にご講演頂きました。大気化での腐食の形態、特に水膜別による腐食速度のシミュレーション研究に関しましては、緻密な実験に伴う計算で導かれており、今後の実環境における鋼材劣化モニタリングや余寿命予測に有効な手段となると感じました。

 第2講演は「自動車用表面処理鋼板の開発動向」と題しまして、新日鐵住金株式会社の松村講師よりご講演を頂きました。ご講演では自動車に求められる防錆ニーズの変遷とそれに併せた表面処理鋼板の開発の歴史にも触れて頂き、過去からの自動車鋼板の変遷から、現在のGA材の組成にまで踏み込んだ内容、そしてホットプレスに至るまでの将来鋼板動向までお話して頂き大変参考になりました。

 第3講演は「塗膜を支える表面処理の世界」と題しまして、日本パーカライジング鰍フ野本よりお話させて頂きました。従来、塗装下地材として防錆と塗膜との密着性を支えてきたりん酸亜鉛技術のご紹介から、将来の環境規制に対応するジルコニウム化成処理につき、その反応機構・防錆メカニズム・総合防錆性能までお話させて頂きました。

 第4講演は「塗膜による防食技術」と題しまして、日本ペイントホールディングス竃m部講師よりご講演頂きました。ご講演では、塗膜による防食のメカニズムから、防錆における塗料の設計に至るまでお話頂きました。電解剥離試験(メガネセル法)では、塗膜の耐カソード/アノード密着性の評価が、短時間で判定できる試験方法として、非常に興味のある内容でありました。

 第5講演は「塗装鋼板における下塗り塗料のクロムフリー防錆顔料の研究」と題しまして、日本ペイント・インダストリアルコーティングス鰍フ坂本講師よりご講演頂きました。建築物の屋根などに用いられているPCM鋼板に採用されているクロムフリー顔料であるバナジン酸カリウム+りん酸系顔料の開発思想及び検証方法に至るまでのお話を頂きました。特に防錆顔料の選定には、溶出性と溶出した際のpHを指標とされており、防錆顔料の設計思想の基礎となる内容まで話して頂きました。

 第6講演は「ジンクリッチペイントの自己修復特性と将来動向」と題しまして、関西ペイント鰹シ田講師よりご講演頂きました。重防食塗料の代表ともいえるジンクリッチペイントにつき、改めまして自己修復による防食機構のご説明を、電気化学インピーダンス特性、分極特性の結果を用いて説明頂きました。今後のジンクリッチペイントの将来動向として、水系化と亜鉛の枯渇問題をあげられており、今後の動向につき注視していきたいと思います。

 防錆は世界を取り巻く地球環境、使用環境に応じ、開発・改良が進められてきました。例えば、自動車はスパイクタイヤの禁止に伴い、降雪地域を中心に融雪剤を多く散布する事になり、腐食環境は一段と厳しいものになりました。また、RoHS指令、ELV指令、REACH規制等に見られる化学物質への規制も今後厳しくなっていくものと予測されます。
 今回の講演の全体を通しまして、改めて過去の先輩方が培ってきた防錆技術を学ぶとともに、これから起こる地球環境に適合した防錆システムを構築し、限りある地球資源を後世に残していく責任があると思います。

 最後に、講演会にご参加頂きました皆様には、会場でのご意見やご質問、アンケートにご回答して頂きまして誠にありがとうございました。また本講演会の内容が皆様の業務に少しでもお役に立つことがあれば、大変嬉しく思います。
 次回の平成29年度第3回講演は、「自動車塗装の最新動向(仮)」をテーマにて、平成30年2月16日(金)に予定しております。現在のトレンドに併せた講演を企画しておりますので、是非奮ってご参加頂けますようご検討頂けると幸いです。塗装技術協会セミナー委員会一同、皆様の参加をお待ちしております。

平成29年度第2回講演会
実行委員長 野本 壮一


講演会 会場

主催日本塗装技術協会  
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本防錆技術協会表面技術協会日本自動車車体工業会
高分子学会日本塗装機械工業会日本工業塗装協同組合連合会
日本塗装工業会日本塗料検査協会自動車技術会
材料技術研究協会静電気学会日本印刷学会
日本金属学会日本建築学会国際工業塗装高度化推進会議
日本建築仕上学会日本粉体工業技術協会日本レオロジー学会
腐食防食学会日本油化学会粉体工学会

 
期日平成29年 10月27日(金)
会場日本ペイントホールディングス株式会社 東京事業所 センタービルAホール
東京都品川区南品川4−1−15

参加費主催、協賛学協会会員16,200円
非会員21,600円
学生参加者3,240円

プログラム

10:20〜10:30 開会の挨拶とガイダンス    日本塗装技術協会 セミナー委員会
10:30〜11:30 「鋼材の大気腐食機構」
東京工業大学 物質理工学院
教授 西方 篤
アウトライン :
鋼材(炭素鋼、表面処理鋼板、塗装鋼板、ステンレス鋼など)の大気腐食機構について解説するとともに、材料の環境劣化のモニタリング方法についても紹介する。

11:35〜12:35 「自動車用表面処理鋼板の開発動向」
新日鐵住金株式会社 技術開発本部 君津技術研究部
部長 松村 賢一郎
アウトライン :
自動車用途として開発、使用されてきた各種表面処理鋼板を紹介するとともに、最近の自動車車体技術の進化、深化とそれに応じた表面処理鋼板の進歩について解説する。

昼食休憩(45分間)
13:20〜14:20  「塗膜を支える表面処理の世界」〜リン酸亜鉛からジルコニウム化成へ〜
日本パーカライジング株式会社 マーケティング部自動車グループ
課長 野本 壮一
アウトライン :
リン酸亜鉛皮膜は塗膜下にて、長年鋼材を腐食から守ってきた。近年の自動車軽量化・環境負荷物質規制に伴い、従来のリン酸亜鉛からジルコニウム化成への切り替えが進んでいる。今回はリン酸亜鉛とジルコニウム化成を比較して紹介するとともに、ジルコニウム化成に切替える際の注意点などについて説明する。

14:25〜15:05 「塗膜による防食技術」
日本ペイントホールディングス株式会社 R&D本部 次世代技術研究所
卜部 健吾
アウトライン :
塗膜の3つの役割は保護、美観、機能付与であり、中でも金属を腐食から保護する防食技術は、構造物の長寿命化や省エネなどの観点からも特に重要である。本講演では、主に塗膜による防食技術について、腐食の種類、防食メカニズムとその制御技術、評価技術等について、実例を交えて紹介する。

休憩(15分間)
15:20〜16:00 「塗装鋼板における下塗り塗料のクロムフリー防錆顔料の研究」
日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社
第一塗料事業本部コイルコーティングス部 大阪技術G 坂本 聡明
アウトライン :
外装建材に用いられる塗装鋼板は、下塗り塗料に6価クロム防錆顔料を含む仕様が主流だが、環境負荷や安全性の観点から、代替材料への切り替えが求められている。電気化学的な評価方法を活用し、クロム防錆顔料相当の機能を有した新規クロムフリー防錆顔料を研究、開発した結果に関して紹介する。

16:05〜16:45 「ジンクリッチペイントの自己修復特性と将来技術動向」
関西ペイント株式会社 塗料事業部
技術開発第3部 課長 松田 英樹
アウトライン :
ジンクリッチペイントは多量の金属亜鉛末を含有し、「塗布型めっき」としての機能を有するため、長期防食性が要求される大型構造物の塗装仕様において近年採用が一般化されてきた。その防食機構は、「犠牲防食」と一言でくくられることが多い。ここでは、ジンクリッチペイントに関する最近の話題を交えながら、その作用機構と今後の課題について深堀りする。

17:00〜18:00 交流会(名刺交換会)
於:2階 食堂 


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