プログラム

<講演会報告>

平成29年度 第3回講演会を終えて

平成29年度第3回講演会を「自動車塗装に見るものつくりのチカラ 〜提案から実現へ〜」と題しまして、2月16日に日本ペイントホールディングス株式会社東京事業所センタービルAホールにて実施致しました。
当日は約110名のお客様に御聴講いただくととができ、交流会も含め大変盛況な講演会となりました。講師の方々におかれましては、ご多忙の中執筆・ご講演と多大なるご協力を賜りましたこと、この場を借りまして御礼申し上げます。

我が国のものつくりの環境は厳しさを増す中、塗装に求められるものは?価値を創造する技術は?世界中に通用する価値とは?世界中に通用する価値を生み出すのに塗装はどう貢献していくのか?といった問いに答えるために、今回は、意匠のデザインから実現するプロセス、そして製品として維持することまで一貫して取り上げさせていただき、6つのトピックスを用意させていただきました。

午前中は、最新のデザインを創り出す事例をご紹介するセッションを設定させて頂きました。
第1講演は、『私達が考えるべきこれからのCMFデザイン価値』と題しまして、株式会社 FEEL GOOD CREATION 代表の、玉井 美由紀講師 よりご講演頂きました。
COLOR(色彩)、MATERIAL(素材)、FINISHING(表面)の3つの要素をデザインし、所有・購入の強い動機づけにつながる感性価値を創り出し提案する最新の活動をご紹介いただきました。従来のカラーデザインのイメージと異なる様々な事例を紹介いただき、デザインの開発の取り組み方について参考としていただけたかと思います。

第2講演は、『ブランド価値向上に向けた、独自のカラーデザイン戦略』〜デザイナーと技術者の共創で生まれた新たな価値創り〜 と題しまして、マツダ株式会社 デザイン本部 クリエイティブデザインエキスパート 岡本 圭一講師 よりご講演頂きました。
デザインに哲学を持たせ、プロダクトを象徴する色開発を推し進めてきた経緯と、理想を実現させた取り組み、更なる深化創りの取り組みをご紹介いただき、作り込んだムービーでは圧倒され、そして大切なものがみえてきた感じが致しました。技術者にとってとらえにくい内容も壁をつくらず共有し実現させていった姿勢に感銘を受けていただけたかと思います。

午後は最新の測色機器の動向を紹介するセッションを設定させていただきました。
第3講演は、『カラーアピアランス測定可能な、多角度分光測色計のご紹介』と題しまして、ビデオジェット・エックスライト株式会社 エックスライト社 カラー&アピアランス テクニカルアカウントマネージャー 下平 洋一講師 よりご講演頂きました。
発売されたばかりのカラーカメラを備えたマルチアングル測色機種の、今までなかった粒子の発色を評価できる機能をご紹介いただき、そして従来の光学幾何条件(斜めと正面に近い2方向の入射光源)による色を正確に測定できる機能と併せて、デザインされた色の再現性をより数値化できる可能性についてご提案いただきました。

第4講演は『自動車塗装に有用な測色及び外観評価とデジタルカラーマネージメント』と題しまして、コニカミノルタ株式会社 産業光学システム事業本部 瀬戸口 知巳 講師と、向井 隆晋講師 よりご講演頂きました。色の部分では基礎知識から入り、色彩評価方法の基本の解説とこちらも最新のマルチアングル機器で可能になった小面積でのパーツ際測定の活用例をご紹介いただきました。そして外観品質特性に関してこちらも最新機器によるゆず肌だけでなく、反射防止、曇り、金属表面仕上げの評価例をご紹介いただきました。最後に量産時の品質管理をふまえたデジタルカラーマネージメントの取り組みをご紹介いただきました。

そしてまた自動車のプロダクトを対象としたテーマに戻り、
第5講演は『高彩度・高コントラストカラーを実現する自動車塗料の適用開発』と題しまして、日産自動車株式会社 車体技術開発部 塗装・防錆・車体材料技術開発グループ 筒井 宏典講師 よりご講演頂きました。
プレミアムレッドとプレミアムオレンジ塗色の開発目標(彩度、コントラスト)の設定、達成方策の選定(材料、膜厚制御)、技術課題の解決と適用に至るまでの道筋をデーターに基づき明確に整理して述べて頂き、大変わかりやすく理解、納得していただけたかと思います。

第6講演は『自動車防錆における市場トレンド』と題しまして、トヨタ自動車株式会社 有機材料技術部 防錆技術室 室長 大河内 智講師 よりご講演頂きました。
綿密な市場調査に基づく各地域での防錆ニーズや軽量化・環境規制対応について、影響因子も含めわかりやすく整理し、かつ詳しくお話しいただきました。
使用する材料や工程での仕様に全て意味があり、市場調査や評価試験の結果がフィードバックされ綿密に組み立てられていることがよくわかり、興味深く非常に有益だったと思います。

当日開始前の映像・音響機器の調整に時間を要してしまい、早く来ていただいた方々をお待ちさせてしまうことになり大変申し訳ございませんでした。また資料確認の不備がありページの差し替えがあったことをお詫びいたします。
 そんな中でもいただいたアンケートからは、「デザインから開発、測色、技術的な話とバランスよく聴きごたえがあった。」「ものつくりの入り口からアウトプット、管理、世の中の動きなど広く聞けてよかった。」「各社の課題に対するアプローチ、目標設定、課題対応等、参考になった。」「塗装技術者として大変勉強になりました。」など、ご好評の声をいただき安堵いたしました。今後もいただいた声を反映しながらより塗装業界全体に有益な企画をして参りたいと思います。
 次回の平成30年度第1回講演は、「塗装・塗料工程における生産性向上と環境負荷低減」と題しまして、平成30年6月22日に予定しております。是非奮って参加いただけますようご検討いただけると幸いです。塗装技術協会セミナー委員会一同、皆様の参加をお待ちしております。

平成29年度第3回講演会
実行委員長 若井 宏平


講演会 会場

主催日本塗装技術協会  
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本防錆技術協会表面技術協会日本自動車車体工業会
高分子学会日本塗装機械工業会日本工業塗装協同組合連合会
日本塗装工業会日本塗料検査協会自動車技術会
材料技術研究協会静電気学会日本印刷学会
日本金属学会日本建築学会国際工業塗装高度化推進会議
日本建築仕上学会日本粉体工業技術協会日本レオロジー学会
腐食防食学会日本油化学会粉体工学会

 
期日平成30年 2月16日(金)
会場日本ペイントホールディングス株式会社 東京事業所 センタービルAホール
東京都品川区南品川4−1−15

参加費主催、協賛学協会会員16,200円
非会員21,600円
学生参加者3,240円

プログラム

10:30〜10:45 開会の挨拶とガイダンス    日本塗装技術協会 セミナー委員会
10:50〜11:30 「私達が考えるべきこれからのCMFデザイン価値」
日本インダストリアルデザイナー協会 / 株式会社 FEEL GOOD CREATION
玉井 美由紀
アウトライン :
これからは自らが考え提案する時代。CMFデザインという概念と技術の融合で「日本のものづくりを活性化する」という私達の活動を通じ感じている、これからのデザインと技術の方向性とは?

11:35〜12:35 「ブランド価値向上に向けた、独自のカラーデザイン戦略」
〜デザイナーと技術者の共創で生まれた新たな価値創り〜
マツダ株式会社 デザイン本部
クリエイティブデザインエキスパート 岡本 圭一
アウトライン :
マツダは2010年以降、“魂動デザイン”という哲学の元、すべての商品に統一したデザイン性を持たせる独自のブランド戦略を進めてきています。その中で、カラーもブランドの重要な要素として位置付け開発を行っており、今回そうした開発の実例をベースに紹介したいと思います。

昼食休憩(50分間)
13:25〜14:05  「カラーアピアランス測定可能な、多角度分光測色計のご紹介(MA-Tシリーズ)」
ビデオジェット・エックスライト株式会社 エックスライト社 カラー&アピアランス
テクニカルアカウントマネージャー
下平 洋一
アウトライン :
意匠性に富んだ近年の自動車塗装を評価する目的で、新型のポータブル多角度分光測色計が開発された。本機は従来の多角度による測色機能に加え、多角度光源とRGBカメラによるカラーアピアランス測定を可能とした特徴がある。本機の説明とサンプル評価について解説する。

14:10〜14:50 「自動車塗装に有用な測色及び外観評価とデジタルカラーマネージメント」
コニカミノルタ株式会社 産業光学システム事業本部
瀬戸口 知巳 向井 隆晋
アウトライン :
自動車塗装に用いられるメタリック塗装・パール塗装に着目し、色・光沢・DOI(像鮮明度、写像性、ゆず肌)・反射ヘイズ等における評価方法を解説すると共に、測定器を活用したデジタルカラーマネージメントの可能性に触れる。

14:55〜15:35 「高彩度・高コントラストカラーを実現する自動車塗料の適用開発」
日産自動車株式会社 車体技術開発部
塗装・防錆・車体材料技術開発グループ
筒井 宏典
アウトライン :
自動車のカラートレンドをみると、高彩度で且つ陰影が強いカラーが増えてきている。このような塗色はカラークリアやカラーベース塗膜を工夫することで実現されている。今回、カラークリアと高彩度カラーアルミフレークの適用技術について報告する。

休憩(15分間)
15:50〜16:50 「自動車防錆における市場トレンド」
トヨタ自動車株式会社 有機材料技術部
防錆技術室  室長
大河内 智
アウトライン :
自動車に対する耐食性向上ニーズの歴史や、欧州・中国を中心とした防錆材料に対する環境規制動向(六価クロム、コバルト塩、ニッケル等)について解説する。また、それらに対応する防錆材料の開発動向や、耐食性評価方法のトレンドについて紹介する。

17:00〜18:00 交流会(名刺交換会)
於:2階 食堂 


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