プログラム

<講演会報告>

平成30年度第2回講演会を終えて

 平成30年度第2回講演会を「微粒子・粉体の塗装技術最先端を学んで次世代への展開を考えよう!!」と題し、10月5日に日本ペイントホールディングス株式会社の東京事業所センタービルにて開催し、50名を超える聴講者にご参加いただきました。
 講師の方々におかれましては大変お忙しい中、講演の準備に加えて、微粒子に関連する技術をわかりやすく丁寧にご講演をいただいたこと、この場を借りて深くお礼申し上げたいと思います。

 第1講演では、「微粒子の機能構築と界面制御技術」という演題で、特別講演として東京理科大学 小石名誉教授よりご講演いただきました。粒子の基礎的事項から、無機・有機・金属系顔料、微粒子の表面処理や複合化技術、粉体粒子の物性評価と機能性付与について、塗料への応用まで幅広く深い内容を写真を豊富に使ってわかりやすく説明いただきました。講演会資料は、今後の皆さんの技術資料になること必須です。
 第2講演では、「結晶セルロースによる水系塗料の安定化」のについて、旭化成株式会社 山崎講師から、結晶性セルロースの特徴とその構造を親水・疎水の性質やSEM写真などの結晶構造特性、水性工業製品への応用について、イメージ図を使い、水性製品での分散性や粘弾性制御の可能性を提案いただきました。温度特性として、高温で粘度が向上する特性や可逆反応であることは、非常に面白い要素と感じました。
 第3講演では、「エアスプレーガンにおける微粒化制御方法」という演題で、アネスト岩田株式会社 の諸星講師より、現状のグローバル情勢および規制そしてダスト・圧縮空気の低減を目的とした最新のVスリット型の霧化について、講演いただきました。最新のVスリット塗装機は、空気量が少なくても微粒化が良くなる新しい技術をもち、シュリーレン法および多くの検討実験から解析され、興味湧く内容でした。
 第4講演は、「二層分離形複合樹脂粉体塗料の開発」というタイトルで、大日本塗料株式会社 木口講師より、フッ素樹脂を上層へ分離させる技術を開発し、大幅に耐候性が向上する内容について講演いただきました。分離構造に必要な要素しては、ポリエステルのSP値(極性)や表面張力ではなく、溶融粘度と活性化エネルギーの関係性が重要であるとの興味深い内容の講演でした。
 第5講演では、「粉体原色調色システムによる小ロット、短納期対応の実現と環境負荷低減へのアプローチ」と、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社の石母田講師より、ユニークで新しいユーザーニーズに合わせた調色システムについて、講演いただきました。少量多品種調色を粉体塗料で色むらなくカラー化を達成するためには、粉体粒子の粒子径制御でなく、粒子にCCAという帯電粒子制御と流動性や耐久性を制御する添加剤が重要役割を果たしており、そして、この材料粉に最適の静電塗装条件を見出しているということ高い技術内容の講演でした。
 最後の第6講演では、「粉体塗装機器、関連システムの最新技術動向」旭サナック株式会社 蜩c講師より、次世代型粉体塗装システムについて講演いただきました。新しいデュアル静電方式は、アースリング設計により高塗着効率を達成でき、高速色替えシステムは静電気学を考慮して清掃性を格段に向上し、次世代型として新しい3D検出制御により、高速高塗着効率が達成できる技術を講演いただきました。

 今回は、環境側面から近年では粉体塗装が改めて見直されていること、そして水性化にともなって必要となる微粒化技術、分散技術など、液体・粉体を問わず"粒子"を多面的に捉え講演会を開催させていただきました。
 日本の技術力は、これまでの実績・経験に加えて様々な情報から新しいものを創り出していくことにあり、そのためには十分に考え得るだけの情報・技術・アイデアを蓄え整理してそして熟考することが大切であると考えております。
 講演会に参加された皆様、数多くの質問や意見、そして交流会へのご参加ありがとうございました。講師陣よりご講演いただいた内容は、今後の塗装グローバル化ニーズに対応できる技術であると思いますので、聴講者の皆様の技術力蓄積・業務に少しでも活用いただければ幸甚でございます。
 平成30年度第3回講演会は、2019年2月8日に「自動車塗装から、塗装のこれからを語る。」での講演会を開催予定ですので、奮ってご参加いただくようお願い申し上げます。

平成30年度第2回講演会
実行委員長 中岡 豊人

小石眞純 先生 特別講演
講演会場

主催日本塗装技術協会  
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本防錆技術協会表面技術協会日本自動車車体工業会
高分子学会日本塗装機械工業会日本工業塗装協同組合連合会
日本塗装工業会日本塗料検査協会自動車技術会
材料技術研究協会静電気学会日本印刷学会
日本金属学会日本建築学会国際工業塗装高度化推進会議
日本建築仕上学会日本粉体工業技術協会日本レオロジー学会
腐食防食学会日本油化学会粉体工学会

 
期日平成30年10月 5日(金) 10:20〜17:00
会場日本ペイントホールディングス株式会社 東京事業所 センタービルAホール
東京都品川区南品川4−1−15

参加費主催、協賛学協会会員16,200円
非会員21,600円
学生参加者3,240円

プログラム

10:20〜10:30 開会の挨拶とガイダンス    日本塗装技術協会 セミナー委員会
10:30〜11:30 特別講演 「微粒子の機能構築と界面制御技術」
東京理科大学名誉教授 小石眞純
アウトライン :
「微粒子設計」はミクロ・ナノ粒子また無機・有機・金属・高分子などの素材により異なるが、今回は機能構築と界面制御技術による有効な物性付与・評価例を中心に、塗料・塗装との関連性を含めて紹介する。

11:35〜12:35 「結晶セルロースによる水系塗料の安定化」
旭化成株式会社 高機能マテリアルズ事業本部
添加剤事業部 セオラス技術開発部
食品・工業グループ グループ長  山崎 有亮
アウトライン :
結晶セルロースは、水中で微粒子に分散し、密なネットワーク構造を形成し、低粘度で高い懸濁安定性、チキソトロピー性等の特性を呈する。水系塗料では顔料の分散性・塗工性の向上が期待できる。基礎物性・応用例について紹介する。

昼食休憩(50分間)
13:25〜14:15  「エアスプレーガンにおける微粒化制御方法」
アネスト岩田株式会社 コーティング開発部
コーティングイノベーションチーム
チームリーダー 諸星 敦之
アウトライン :
100年以上の長い歴史を持つエアスプレーガンが未だに塗装工程の第一線で使用されている。
基本的な構造は変わらないが、汎用、HVLP、Vスリット方式など、様々な霧化頭が開発されてきた。
これらの特徴について紹介する。

14:20〜15:00 「二層分離形複合樹脂粉体塗料の開発」
大日本塗料株式会社 金属焼付塗料事業部
テクニカルサポートグループ
チームリーダー 木口忠広
アウトライン :
下地基材への高い付着性および優れた耐候性の両立を目的に、硬化塗膜の表層がふっ素樹脂、下層がポリエステルで構成される二層分離形複合樹脂粉体塗料の検討経緯について紹介する。

休憩(15分間)
15:15〜16:05 「粉体原色調色システムによる小ロット、短納期対応の実現と環境負荷低減へのアプローチ」
日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社
第二塗料事業本部 事業推進部 GIMプロジェクト
マネージャー 石母田 佳和
アウトライン :
粉体塗料は生産設備の都合で小ロット、短納期対応には適していないとされるが、溶剤系塗料と同じようなCCM(コンピューターカラーマッチング)を兼ね備えた粉体原色調色システムの開発により「1kg〜、2時間以内」を実現した。本講演では、塗装技術の視点を加えてその制御技術と実例について紹介する。

16:10〜17:00 「粉体塗装機器、関連システムの最新技術動向」
旭サナック株式会社 塗装機械事業部
技術開発部
次長 蜩c 建三
アウトライン :
塗料使用量削減と優れた仕上がりを両立するデュアル電界方式を採用した粉体静電ガン、および従来の色替え時間を約1/2に短縮可能な高速粉体色替塗装システムについて、導入事例を交えて解説する。さらに新開発の3D形状認識自動粉体塗装システムの特長についても紹介する。

17:15〜18:15 交流会(名刺交換会)
於:2階 食堂 


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