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 平成23年度特別事業 第2回『塗装入門講座』を終えて

 昨年にスタートした日本塗装技術協会主催の第二回塗装入門講座が9月13(火曜日)、14日(水曜日)の二日間、日本ペイント株式会社・東京事業所で開催されました。今回の開催については3月11日に起こった東日本大震災による節電対策で多くの会社が土、日に出勤して月〜金曜日の中で二日間を休日にすることを余儀なくされました。このような状況の中で87名という多くの参加者があり熱心に聴講いただきました。
 
第2回『塗装入門講座』 会長挨拶
 塗装の使命とは主として素材(被塗物)の美装・保護(耐久性・耐食性)を目的としてきましたが、最近では塗膜に特殊な機能性を与える技術開発(環境に配慮した技術)が進み、お客様が喜んでいただける塗膜を供給することが塗装に関わる技術者の役割ですが、最近ではお客様の塗装ラインにおられた塗料・塗装に関わるプロフェッショナルの技術者が大巾に少なくなった気がします。

 昨年の第一回入門講座のアンケートに深く耳を傾け、塗料、塗装に関する技術講演に加えて、塗装ラインにおけるモノづくりの代表として再び、自動車メーカー、新たに世界一の電波塔"スカイツリー"®を建設された大手ゼネコン、さらにカラーの世界を楽しく知っていただくために、色彩の専門家から手作りの教材を使ってカラーの世界をわかり易く、深くご講演していただき、塗料・塗装がいかに重要であるかの説明をお願いしました。

@塗装概論     職業能力開発総合大学校 専門基礎学科 准教授 武井昇講師
 昨年に引き続き、塗料市場の現状、塗料が塗膜になる基本的な過程を図表を使ってご講演していただきました。

A塗装・塗膜の欠陥と対策     関西ペイント(株)高林 勇講師
 顕微鏡写真・イラストでわかり易く、さらに多くの欠陥の見本板も準備され、また、欠陥の原因を探る特性要因図は非常に参考になりました。

B塗装機器の基礎と今後の動向     旭サナック(株)竹下直孝講師
 数ある塗装方法、特にスプレー塗装を中心に多くの動画を使って塗装における塗着効率の重要性を強調された。

C自動車塗装工程の概要と課題     トヨタ自動車(株)塗装生技部 松浦 治講師
 グローバルな競争の中で日本の自動車塗装の差別化された塗装ラインの管理、環境への重要性を多くのイラスト・動画で解説された。

D東京スカイツリーをさびから守る塗装技術     (株)大林組技術研究所 堀 長生講師
 世界一高い電波塔は耐食性だけではなく、美観重視、さらに厳しい東京都の環境規制にも合格する技術開発への苦労話をご講演された。

E各種霧化塗装機と霧化塗装における塗面形成の本質的要素    アネスト岩田(株) 森田信義講師
 スプレー塗装における霧化状態の粒子挙動の解析し、経験でしか得られなかった塗装技術を理論的に裏付けて行く努力の必要性を述べられた。

F塗装と環境・安全     BASFコーテイングジャパン 光宗真司講師
 塗料を扱う人が知っていなくてはならない基礎知識、環境安全に関する法令、塗装ラインの今後の設計等について易しく講演された。

G塗装・塗膜の試験評価     (株)A&D 営業本部 田中丈之講師
 塗装された塗料がどのような過程で乾燥・硬化していくか?また、出来上がった塗膜の評価法はどのようにしたら良いかを理論的に解説された。

H色って何だろう     I.D.TANK 田中和浩講師
 手作りの教材をお持込になり、光の三原色を中心にして、色彩の素晴らしさを実演・講演されたが、持ち時間が短かったようでした。

 塗装入門講座の主な対象は、新入社員をはじめとする塗装入門者ですが、新人を教育する立場にある中堅〜ベテラン技術者にとっても、今一度足許を見直し、固め、大きく飛躍するために役立つ講座として、さらに前進して行きたいと思います。厳しい目を持った塗装ラインの技術者(プロフェッショナル)を育てることによって、世界に真似の出来ない機能性にも優れた塗膜を考える若い人を育てて行きたいと思います。
 今年は東日本大震災の中でいかにして日本の復興を急がなくてはならない年ですがこの入門講座が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

以上
第2回『塗装入門講座』 講師との懇談会風景
日本塗装技術協会-
塗装入門講座委員会委員長
旭サナック株式会社 伊藤春揮

プログラム
9月13日(火)

10:00 開会の挨拶     日本塗装技術協会 会長 今井 八郎
10:05〜10:15 ガイダンス     入門講座委員会委員長 伊藤 春揮
10:15〜11:30 No.1 塗装概論 
―塗装の本質を理解するために基本知識から市場動向まで― 
職業能力開発総合大学校
准教授 武井 昇
アウトライン :
塗装の本質を理解するために必要な基本的知識を概説する。液体の塗料から固体の塗膜まで、塗料は劇的に性質が変化する。この変化に加え、複雑な配合物からなる塗料を用いる塗装には、クレームが付きものである。しかし、常に本質は何か見極める姿勢をもって臨むとき、クレームは魅惑的なヴィーナスに変身する。
11:30〜12:15 No.2 塗装・塗膜の欠陥とその対策
関西ペイント株式会社
高林 勇
アウトライン :
塗装・塗料に従事する者は、塗装に関する欠陥に出会わないということはまずない。これらの欠陥は、塗装方法や塗料の種類,素材,塗装環境等により様々であり、その原因も複雑であることが多い。この講座では、それぞれの欠陥について、実際のパネルを交えながら、その原因と対策方法について解りやすく説明する。

昼食休憩(45分間)
13:00〜13:45 No.3 塗装・塗膜の欠陥とその対策(続き)
関西ペイント株式会社
高林 勇
アウトライン :
同上
13:45〜15:15 No.4 塗装機器の基礎と今後の動向
旭サナック株式会社
竹下 直孝
アウトライン :
液体塗料や粉体塗料を被塗装物に塗装するための各種塗装機器の原理や特徴の説明と、動画によりいろいろな被塗装物の現状の塗装方法について紹介したのち、今後の塗装機器の開発動向や塗装の進むべき道について解説を行う。

休憩 ( 15分間 )
15:30〜17:00 No.5 自動車塗装工程の概要と課題
トヨタ自動車株式会社
松浦 治
アウトライン :
わずか数十ミクロンの塗膜で美しい外観意匠や高耐候機能を発揮する自動車塗装について、その生産工程の概要を説明すると共に、生産技術の視点から見た様々な課題を若手エンジニアの皆さんと一緒に考えたい。

17:10〜18:50 懇  談  会
日本ペイント株式会社 東京事業所
2階食堂
名刺交換程度の懇談会を開催いたします。
(講師の方が都合により参加頂けない場合もありますので、予めご了承下さい。) 

プログラム
9月14日(水)
9:15〜10:45 No.6 東京スカイツリー®を錆から守る塗装技術
株式会社大林組
堀 長生
アウトライン :
東京スカイツリー®は、高さ634mの世界一自立式電波塔を目指して施工中である。主塔を構成する鉄骨は、塗装によって保護されている。
 100年間、錆から鉄骨を守る塗装技術はどの様に開発されたか、地球環境を守るためVOC(揮発性有機化合物)発生量の少ない塗装仕様はどの様に開発されたかを解説する。
休憩 ( 15分間 )
11:00〜12:15 No.7 各種霧化塗装機と霧化塗装における塗面形成の本質的要素
アネスト岩田株式会社
森田 信義
アウトライン :
それ以前の刷毛塗りに較べ、塗装の生産性と仕上がり性を飛躍的に向上させた霧化塗装機について、その種類、霧化のメカニズムと特徴、ならびに、エアスプレー塗装をもとに、良好な塗面を形成する本質的要素について説明する。

昼食休憩(45分間)
13:00〜13:45 No.8 塗装と環境、安全
 - 塗料を安全に使用するためには -
BASFコーティングスジャパン株式会社
光宗 真司
アウトライン :
塗料を安全に使用するには、正しい情報を入手し、多くの知識が必要である。塗料・塗装による環境汚染を防止するために遵守しなければならない法規制を説明する。さらに現在の環境に優しい(VOC,CO2排出量を削減する)塗料・塗装について、実例をあげて紹介する。

13:45〜15:00 No.9 塗料・塗膜の実用的試験技術
株式会社 エー・アンド・デイ
田中 丈之
アウトライン :
塗料・塗膜の試験技術は非常に多くある。その多くの技術は材料的装置的に疑問のある試験法もある。各種の試験法の問題点とより実用的な試験技術について解説する。
物性項目:流動性、溶剤の蒸発、濡れ性、乾燥・硬化性、塗膜物性(硬度・粘弾性・大変形物性・光学的物性・他)

休憩 ( 15分間 )
15:15〜16:45 No.10  
デザイン&プランニングI.D.TANK代表
東京藝術大学美術学部デザイン科非常勤講師
田中 和浩
「色って何だろう」パートT
初歩から学ぶ色の見え−体験編
アウトライン :
まずは色の三要素の解説。簡単な実験やサンプルで、光・物体・視覚を体感しながら色の見える仕組みを探る。光のスペクトル観察。光の反射と物体色の関係の謎解き。どうして混ぜると色は濁るのか?‐その混色メカニズムから、光の原色RGBと色料の原色CMYが表裏一体であることを知る。

「色って何だろう」パートU
塗膜の見えの謎を解く−なるほど編
アウトライン :
パートTの知見から塗料の色の疑問に迫る。人間が識別できる色数は?肌色の秘密‐半透明なものの見え。顔料や光輝材の見えの特徴と、色々な塗膜の見えの解説‐塗膜は皮膜、工業製品の肌の色。塗料の見えは様々な材料の光拡散の組合せ。新しい色の見えは塗膜が作る光の演出にかかっている。

16:45 閉会の挨拶     入門講座実行委員長 原川 浩美
16:50〜17:15 講師との名刺交換及びQ&A


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