要旨

第5回 プロフェッショナルセミナー
“欧州自動車技術国際会議に見る、塗装技術動向”開催報告

あっという間の2時間30分の講演
 2020年11月6日の第1回、2021年7月13日の第2回、同12月2日の第3回、2022年8月5日の第4回に続き第5回プロフェッショナルセミナーが同年12月2日にオンライン方式で開催された。
 講師は、久保井塗装株式会社塗装改善研究室の田村吉宣氏(元いすゞ自動車株式会社)、テーマは、「欧州自動車技術国際会議に見る、塗装技術動向」。
 田村講師は2008年以来、欧州の2つの自動車塗装技術国際会議(SurCar、Berlin会議)に参加し、欧米スター塗装技術者達の膨大な最新発表を定点調査して来られた。
 講師自身もベルリンで2回、パリで1回発表なさったが、欧州の目が眩むような先端技術に圧倒され、自動車塗装技術のデファクトスタンダードが確立されて行く様に憧憬を抱かれたとのことだ。
 本セミナーでは15年にわたる国際会議の内容と変遷を俯瞰し「塗装技術の過去・現在・未来」を共有し、日本工業塗装の今後のあるべき姿について闊達な論議を交わしたいと熱く語ってくださった。
 田村講師のお話しは単なる報告ではなかった。聴講者を国際会議の真っただ中に誘ってくれた。私自身SurCar、Berlin会議の違いはよく分からなかったが、田村講師のお話を聞いてその違いを実感できた。
 「SurCarそれは…塗装技術の檜舞台というのが第一印象であり、今もその認識は変わっていない。Berlin会議がスターエンジニアの技術論戦の場だとすれば、SurCarは塗装技術セレブが一同に集う祭典であり、技術・戦略・人脈が交流する社交場であったからである。
 Berlin会議とSurCarの違い…それはどこから来るものなのか、戸惑った。そして分かった事は、“SurCarの発表者は招待客である”という事であった。招待券は自動車塗装技術を支える材料・塗料・機器・設備メーカーが購入し、世界の自動車塗装技術セレブを招く…という形だったのである。しかし、この方式は一般の国際会議では“会えない・聴けないVIP”の肉声に接し、言葉を交わせる貴重な場を提供していた。Berlin会議、そしてSurCarこれら二大自動車塗装技術国際会議はその性格の違いも含めて貴重なベンチマークの宝庫であった。会議そのものだけでなく、コーヒーブレーク、ランチ、パーティーの中での意見交換や情報入手も可能であった。来て良かったと思った。」
 こんな調子で始まったセミナーが退屈な訳はない。あっと言う間の2時間半であった。
 以上のイントロで始まり以下の順に話は進められた。
 ・2008年〜2014年の国際会議トピックス( 「日本塗装技術協会セミナー委員会」渾身の技術動向調査)
 ・2015年以前の欧州自動車塗装技術国際会議トピックス
 ・ドイツと日本は何が違うのか(考察)
 ・2015年の転換点(変化)
 ・2021年SurCar (カンヌ)の概要
 ・2022年Berlin会議の概要
 ・欧州自動車塗装技術国際会議に見る「工業塗装の過去・現在・未来」(まとめ)
 聴講できなかった方々は是非とも予稿を入手し読んでいただきたい。

期待通りの聴講者の感想
 本セミナー開催に当たり、出来るだけ早く予稿を聴講予定者に送り、予習、事前の質問が出来るようにしてきた。
 その結果、「早い時期から予稿を送付いただいていたため、事前に予習する時間がありセミナーへの理解を深めることが出来た。」との声が寄せられた。今後も予稿の早期発送に心掛けたい。
 大変嬉しい感想が数多く寄せられた。例えば、「過去から現在までを振り返ると過去の将来技術が現実に現在の技術として実現できていることが確認でき、とても驚きました。ドイツの塗装・塗料分野の技術者が一体となって新技術を開発し、それを自分達で使うだけでなく、国外新興地域にシステムごと販売していくやり方に非常に関心を持ちました。日本の現状のように、各社・各ライン・各サプライヤーがバラバラの条件で塗装され、それに“摺合せた”塗料が提供されている状況は、一技術者としては面白いものの、この100年に一度の変革期においては非効率で、日本の製造業が衰退することに繋がらないかと危惧します。是非、これを機会に、塗料・塗装が一体となって技術開発する機運が芽生えてくれば良いかと思いました。」(一部筆者が主旨を変えない範囲で補足)など、本セミナーの狙いをしっかり受け止めてくださったと感激している。
 「今後の塗装の方向性、特にインクジェットなどの印刷塗装技術、自動検査、自動補修の技術についてもお話しされ大変興味深い内容でした。」という声が多い中、「CN(カーボンニュートラル)達成という課題が非常に難しい状況で塗装がどうなるのかというヒントに対しては新たな情報等が思ったよりも得ることが出来なかった。」という声も聞かれた。CNに関しては日本塗装技術協会の講演会で取り上げられている。例えば本年、2月3日に開催された2022年度第3回講演会「塗装業界のカーボンニュートラルへの挑戦〜自動車塗装システムでの試み〜」等が挙げられる。是非本協会の講演会も併せて聴講していただきたい。

要望をお寄せください
 一人のプロフェッショナルにたっぷり時間をかけて講演していただき、Q&A時間を十分に確保するというのがプロフェッショナルセミナーの真髄である。今後本セミナーで話してもらいたいプロフェッショナル、テーマなど皆さんの熱い思いを本協会事務局、或いは筆者自身にお寄せいただければこれに勝る喜びはない。
プロフェッショナルセミナー実行委員長
奴間 伸茂

主催一般社団法人
日本塗装技術協会
  
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本塗装工業会表面技術協会日本塗装機械工業会
高分子学会日本工業塗装協同組合連合会日本自動車車体工業会
日本防錆技術協会材料技術研究協会日本レオロジー学会
日本印刷学会日本建築仕上学会日本塗料検査協会
日本油化学会腐食防食学会自動車技術会
静電気学会粉体工学会日本粉体工業技術協会
国際工業塗装高度化推進会議エポキシ樹脂技術協会日本塗料商業組合

(順不同)

 
期日2022年 12月 2日(金) 午後1時〜午後4時45分まで
会場オンライン開催
テーマ欧州自動車技術国際会議に見る、塗装技術動向
講師田村 吉宣 氏
久保井塗装株式会社 塗装改善研究室 室長

参加資格・参加費日本塗装技術協会会員15,000円
(正会員複数人申込特典 @12,000円)
 非会員20,000円
(非会員複数人申込特典 @16,000円)

要旨
 塗装技術動向‥誰しもが知りたい事であろう。しかし範囲は広大で業界も調査方法も迷う。この一つの回答は人・物・金が集まり凌ぎを削る頂点業界の自動車塗装についての国際会議調査である。
 約15年前「25年以上を経過した自動車塗装工場の老朽代替・生産統合・新鋭化を同時達成する計画を立案せよ。」との上位指示が下り「まずは世界最新鋭の自動車塗装工場を見学しよう。」という事になり、中国長春第一汽車の2工場を見学した。そして驚愕した。そこでは、想像を絶するドイツ製の未来塗装工場が実在し、稼働していた。日本技術の周回遅れと「先端塗装技術は欧州に在り」を思い知らされた瞬間であった。
 かくして2008年以来、欧州の2つの自動車塗装技術国際会議(SurCar、Berlin)に参加し、2日間にわたる欧米スター塗装技術者達の膨大な最新発表を定点調査して来た。不肖私もベルリンで2回、パリで1回の発表を行う幸運に恵まれたものの、欧州の目が眩むような先端技術に圧倒され、自動車塗装技術のデファクトスタンダードが確立されて行く様に憧憬を抱いた。
 本セミナーでは15年にわたる国際会議の内容と変遷を俯瞰し「塗装技術の過去・現在・未来」を共有し、日本工業塗装の今後のあるべき姿について闊達な論議を交わしたい。

内 容
1. 欧州自動車塗装技術国際会議の紹介
2. 2008年〜2014年の国際会議トピックス
3.2015年の転換点
4.欧州と日本の差異分析
5.2021年SurCar(カンヌ)の概要
6.2022年Berlinの概要
7.欧州自動車塗装技術国際会議に見る「工業塗装技術の過去・現在・未来」


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