要旨
第8回 プロフェッショナルセミナー「セルロースナノファイバーの現在地」 〜機能と特徴からみる最新の使い方と塗料への展開〜 開催レポート
2024年12月17日、第8回プロフェッショナルセミナーがZOOMを使用したオンラインで開催され、多くの聴講者の方にご参加頂きました。今回のセミナーでは、第一工業製薬株式会社 研究本部研究カンパニー部レオクリスタ・サステナブル材料グループ長の後居洋介様を講師に迎え、木材などのバイオマス原料から生成されるナノサイズの繊維状物質「CNF(セルロースナノファイバー)」に焦点を当て、「セルロースナノファイバーの現在地」をテーマにご登壇頂きました。
CNFは持続可能な社会の実現に向けて、特に石油由来の素材に依存しないカーボンニュートラル技術の活用例として非常に注目されています。今回のセミナーでは、CNFの基礎から実用事例を広く深く掘り下げました。後居様には、CNFの物理的・化学的解繊工法から、CNF機能発現に関する基礎レオロジー理論及び具体的な応用事例まで、動画等を活用しながら分かりやすく解説して頂きました。
講演の前半では、CNFが持つレオロジー特性や界面化学機能を中心に解説され、聴講者からも注目を集めました。CNFは添加剤として粘性制御剤や顔料分散剤としての機能も持ち、これらのテクノロジーが既存の塗料や化粧品など様々な商品へ応用されることにより、大幅な機能改良が期待されます。特に、CNFが持つユニークなレオロジー特性や乳化、分散機能に関する説明は、聴講者にも非常に興味深いものであり、実際の商品にどのように応用されているのかを学ぶ貴重な機会となりました。
講演後半では、CNFの現在地として産業界での活用推進動向をお話しいただいた後、新たな技術展開として熱可塑化や難燃化といった新材料への応用事例について解説頂きました。CNFが持つ軽量で高強度、さらには低線膨張係数といった特性を活かした新たな活用例は、非常に興味深いものです。既存材料からの置換により、環境負荷低減にも貢献できる技術としてCNFが今後も持続可能な社会実現に向けた重要な原材料との位置付けにある事が良く理解できました。
後居様には今回ご講演内にて、ご自身のCNF研究ヒストリーを伺える機会もあり、非常に興味深い内容でした。実際の製品開発におけるCNF商品化プロセス事例をいくつかご紹介いただき、今後聴講者自身が新規開発品を上市させる際に非常に参考となるお話しが伺えたと考えます。
約3時間の講演に続いて45分間のQ&Aセッションを行いました。今回聴講者の皆様からは多くの専門技術的な質問が相次ぎ、活発な議論が展開されました。異なるバックグラウンドを持つ聴講者にも、それぞれの技術開発テーマ推進に対し、大きな刺激となったことでしょう。参加者からは「非常に内容の濃いご説明で理解しやすかった」「CNFの技術動向が知れて良かった」といった声が寄せられ、私たちの目指した「プロフェッショナルセミナー」の開催目的が果たせたことも確認できました。熱心にご参加頂きました聴講者の皆様に心より感謝を申し上げます。
最後に、講師の後居様には本セミナーの企画段階から当日のご講演まで多大なご協力を頂きました事に対し、感謝を申し上げます。また今回の講演内容が聴講された皆様に少しでも貢献できることを願っております。次回プロフェッショナルセミナーでまたお会いできることを楽しみにしています。どうぞ引き続き第9回にご期待ください。
第8回プロェッショナルセミナー実行委員長 安藤 憲一郎
主催 | 一般社団法人 日本塗装技術協会 | | |
協賛 | 日本化学会 | 色材協会 | 日本塗料工業会 |
| 日本塗装機械工業会 | 高分子学会 | 日本工業塗装協同組合連合会 |
| 日本防錆技術協会 | 材料技術研究協会 | 日本レオロジー学会 |
| 日本印刷学会 | 日本建築仕上学会 | 日本油化学会 |
| 腐食防食学会 | 自動車技術会 | 静電気学会 |
| 日本粉体工業技術協会 | 国際工業塗装高度化推進会議 | エポキシ樹脂技術協会 |
(順不同)
期日 | 2024年 12月 17日(火) 午後1時〜午後4時45分 |
会場 | オンライン(ZOOMウェビナー) |
テーマ | 「セルロースナノファイバーの現在地」 〜 機能と特徴からみる最新の使い方と塗料への展開 〜 |
《講師》 | 後居 洋介 氏 |
| 第一工業製薬株式会社 |
| 研究本部研究カンパニー部レオクリスタ・サステナブル材料グループ長 |
参加資格・参加費 | 日本塗装技術協会正会員 | 15,000円 (複数人申込特典 @12,000円) |
| 協賛学協会会員 | 15,000円 (複数人申込特典 @12,000円) |
| 非会員 | 20,000円 (複数人申込特典 @16,000円) |
要 旨 |
セルロースナノファイバー(CNF)の研究開発が盛んになってから、既に20年が経過しようとしている。
製紙メーカーを中心とする多くの企業が活発な研究開発を実施している。第一工業製薬においても、2006年頃から
CNFの研究開発を開始し、水系機能性添加剤「レオクリスタ®」として製品化している。一時期は「夢の新素材」、
「鋼鉄の5倍の強度」などのキャッチフレーズで産業界でも非常に高い注目を集めたCNFであったが、想定以上に
社会実装が進んでいないのでは、という声があるのも事実である。本セミナーでは、工業材料としてのCNFの研究開発、
社会実装はどれくらい進んでいるのか、CNFメーカーとして感じている「現在地」を紹介する。
特に、水系機能性添加剤としてのレオロジーコントロール、乳化、分散といった機能と特徴、それらを応用した
実用化例を中心に、塗料分野での応用例も紹介する。
また、近年新たに取り組んでいる熱可塑化、難燃化など、CNF技術を応用したセルロース材料の新たな可能性についても、
研究開発事例を交えて紹介する。
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1. セルロースナノファイバーとは?
1-1. 持続可能な社会の実現に向けたセルロース材料への再注目
1-2. セルロースナノファイバーの構造と特徴
1-3. 産業界におけるセルロースナノファイバー
2. 水系機能性添加剤としてのセルロースナノファイバーの機能と特徴
2-1. レオロジーコントロール
2-2. 乳化、分散機能
2-3. 皮膜形成能
3. 実用化、応用事例
3-1. 塗料、インク
3-2. 化粧品
3-3. 電池材料
3-4. セラミックス
4. セルロースナノファイバーの現在地
これまでの開発から見えてきた可能性と課題
5. CNF技術を応用したセルロース材料の新たな可能性
5-1. 熱可塑化セルロース
5-2. 難燃化セルロース
6. さいごに
これからのセルロースナノファイバー
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