プログラム

2025年度 第3回講演会 実施報告

自動車塗装現場におけるDX化活動の最前線
〜 激動の時代を乗り切る・変革・戦略的アプローチ 〜

2026年2月13日(金)に、「塗装工程のDX・デジタル化最前線 〜 AI・シミュレーション・デジタルツインによる革新 〜」と題した講演会を、日本ペイントホールディングス株式会社 東京事業所 センタービル1Fホールにて実施いたしました。当日は多くの皆様にご参加いただき、誠にありがとうございました。

本講演会では、塗装分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の最新動向に焦点を当て、材料開発から生産技術、設備、シミュレーションに至るまで、幅広い領域におけるデジタル活用事例を共有することを目的として企画いたしました。各分野の第一線でご活躍されている講師の皆様より、実務に基づいた非常に有益なご講演をいただきました。

以下に各講演の概要をご紹介いたします。

■第1講演
「自動車新色開発におけるDX活用」
トヨタ自動車株式会社 早田 祐貴 様

本講演では、自動車の新色開発におけるDX活用事例として、AIとビッグデータを活用した塗装品質予測技術について紹介いただきました。
従来の新色開発では、試作塗料の作製、試験パネル評価、実車評価といった多段階プロセスが必要であり、開発期間の長期化やコスト増大が課題となっていました。これに対し、過去の膨大な塗装評価データ(数百万台規模の実車データを含む)を活用し、機械学習モデルを構築することで、光沢、色差、外観といった塗装品質を事前に予測する仕組みを確立されています。
さらに、予測結果を外観シミュレーションシステム(DSR)と連携することで、「塗らずに評価する」新たな開発プロセスを実現、開発期間の大幅短縮(最大60%)と試作コスト削減を達成された点が非常に印象的でした。
塗料開発におけるデータ駆動型アプローチの可能性を強く示す講演でした。

■第2講演
「自動車補修分野のDX推進〜熟練技術のデジタル化と人材育成〜」
関西ペイント株式会社 立花 優志 様

本講演では、自動車補修塗装分野におけるDXの取り組みとして、熟練技術のデジタル化および人材育成への活用について紹介いただきました。
補修塗装の現場では、作業品質が作業者の技能に大きく依存しており、技能伝承の難しさが大きな課題となっています。このような背景のもと、塗装条件や作業ノウハウのデータ化、見える化を進めることで、作業の標準化および教育効率の向上を図る取り組みが紹介されました。
また、VOC低減などの環境対応やサステナビリティの観点からも、データ活用による最適化の重要性が強調され、補修分野におけるDXの意義と今後の展望が示されました。
技能依存度の高い分野におけるDX推進のリアルな課題と可能性を理解できる講演でした。

■第3講演
「塗装工程におけるシーメンスデジタルツインのご紹介」
シーメンス株式会社 宇都 泰孝 様

本講演では、塗装工程におけるデジタルツイン技術の活用について、具体的なソリューションと適用事例を交えてご紹介いただきました。
特に、ロボット塗装におけるシミュレーション技術(Process Simulate)により、塗装経路、膜厚分布、塗布カバレッジなどを事前に検証することで、試行錯誤の削減と品質向上を両立できる点が強調されました。
さらに、バーチャルコミッショニング(仮想試運転)を活用し、設備導入前に制御ロジックや動作検証を行うことで、立上げ期間の短縮やコスト削減を実現した事例が紹介されました。
IoTデータと連携したデジタルツインによる生産性向上やボトルネック解析を実現した実例も示され、塗装工程の高度化におけるデジタル技術の有効性が明確に示されました。

■第4講演
「DXを支えるシミュレーション技術とAI技術の最新動向」
アンシス・ジャパン株式会社 増田 俊輔 様

本講演では、塗装工程におけるシミュレーション技術およびAI技術の最新動向についてご紹介いただきました。
流体解析や粒子挙動解析などの物理シミュレーションにAIを組み合わせることで、従来困難であった複雑現象の予測精度向上や計算時間短縮が可能となってきている点が示されました。
また、設計段階から生産段階までを一貫して最適化する「デジタルエンジニアリング」の重要性が強調され、シミュレーションとAIの融合が今後の競争力の鍵となることが示唆されました。
実務への適用を見据えた技術動向として非常に示唆に富む内容でした。

■第5講演
「塗装工程のデジタル変革:ABBが描く未来」
ABB株式会社 中島 秀一郎 様

本講演では、塗装工程の将来像として、ロボティクスとデジタル技術を融合したスマートファクトリーの実現に向けた取り組みについてご紹介いただきました。
塗装ロボットの高度化やデータ連携による最適制御、さらにはAIによる自律的な工程改善など、次世代の塗装ラインの姿が提示されました。
また、設備単体ではなく、工程全体を俯瞰したデジタル統合の重要性についても言及され、塗装工程のDXが単なる効率化にとどまらず、競争力強化に直結するものであることが強調されました。
将来の塗装工場の方向性を具体的にイメージできる講演でした。

■総括

本講演会を通じて、塗装分野におけるDXは、単なるデジタルツールの導入にとどまらず、開発・生産・人材育成といった広範な領域に変革をもたらすものであることが改めて認識されました。
特に、
 ・AIによる品質予測
 ・デジタルツインによる工程最適化
 ・シミュレーションと実機の融合
 ・技能のデジタル化
といった取り組みは、今後の塗装技術の中核となることが期待されます。
ご講演いただきました講師の皆様ならびにご参加いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。
本講演会が、皆様の業務におけるDX推進の一助となりましたら幸いです。アンケートにていただいた貴重なご意見は、今後の企画・運営に活かしてまいります。

2025年度 第3回講演会 実行委員長 後藤 丈志

主催一般社団法人
日本塗装技術協会
  
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本塗装機械工業会高分子学会日本工業塗装協同組合連合会
日本自動車車体工業会日本防錆技術協会材料技術研究協会
日本レオロジー学会日本印刷学会日本建築仕上学会
日本塗料検査協会日本油化学会腐食防食学会
自動車技術会静電気学会日本粉体工業技術協会
国際工業塗装高度化推進会議エポキシ樹脂技術協会 

 
期日2026年 2月 13日(金) 09:05〜16:25
会場日本ペイントホールディングス株式会社 東京事業所 センタービル1Fホール

参加費日本塗装技術協会及び協賛学協会会員22,000円
非会員29,700円
学生参加者3,300円

プログラム
講師の方の敬称は略させていただきます。

09:50
開会の挨拶とガイダンス  日本塗装技術協会 第3回講演会実行委員長
10:00

11:00
(Q&A含む)
「自動車新色開発におけるDX活用」
1 トヨタ自動車株式会社
モビリティ材料技術部 樹脂・塗装設計室
グループ長 早田 祐貴
概要:
市場トレンドや顧客ニーズを迅速に反映するため、弊社ではDXを活用した新色開発の期間短縮に取り組んでいます。本講演では、「塗らないデジタル評価」をキーワードとした、塗料開発から生産準備、製造までの効率化を実現した技術について紹介します。

休憩(10分間)
11:10

12:10
(Q&A含む) 
「自動車補修分野のDX推進 〜熟練技術のデジタル化と人材育成〜」
2 関西ペイント株式会社
日本汎用事業部門 自補修塗料本部 自補修塗料技術部
カラーサービスG
係長 立花 優志
概要:
自動車補修業界では人材不足が深刻な課題となっており、ESGの観点から、安全で働きやすい職場環境の整備が重要視されています。関西ペイントでは、水性塗料の普及拡大に加え、デジタル技術を活用した技術伝承や人材育成にも取り組んでいます。具体例として、「コンピュータ調色の開発」と「VR塗装研修の導入」を紹介します。

昼食休憩(50分間) ※お弁当をご用意しています
13:00

14:00
(Q&A含む)
「塗装工程におけるシーメンスデジタルツインのご紹介」
3 シーメンス株式会社
営業本部
ビジネスディベロップメントディレクター 宇都 泰孝
概要:
自動車塗装工程におけるデジタルツインの可能性について、  シーメンスが提唱するデジタルスレッド(Digital Thread)、X Solution(クラウドソリューション)、AI戦略の概要とユーザ事例を紹介します。

休憩(10分間)
14:10

15:10
(Q&A含む)
「DXを支えるシミュレーション技術とAI技術の最新動向」
4 アンシス・ジャパン株式会社
技術部
シニアアプリケーションエンジニア 増田 俊輔
概要:
自動車塗装における電着膜厚、気流解析、乾燥炉などの工程に対するシミュレーション手法の活用事例を紹介します。さらに、近年注目されるシミュレーション技術の最新動向や、AI技術の応用例も取り上げ、AIとシミュレーションの両面から、塗装分野におけるDX推進に向けたソリューションの可能性を提示します。

休憩(10分間)
15:20

16:20
(Q&A含む)
塗装工程のデジタル変革:ABBが描く未来
5 ABB株式会社
取締役 ABBロボティクス事業部門塗装事業責任者
中島 秀一郎
概要:
ABBは、高塗着効率塗装機、ピクセルペイントといったアプリケーション技術と、OptiFacPaintソフトウェアによる状態管理、RobotStudioシミュレーションソフトとプロセスシミュレーションの組み合わせによって、塗装ブースのDX化を推進します。将来は3Dデータ連携による自動パラメータ生成や塗装品質事前確認、プリント技術活用で塗装の完全デジタル化を目指します。

16:20

16:25
閉会の挨拶と今後のご連絡


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