要旨

第9回プロフェッショナルセミナー レポート

●共創への足がかり
 9月12日、第9回プロフェッショナルセミナーを「カーボンニュートラルの実現に向けて」 〜 塗装システムにおける現状と将来の方向性 〜のテーマで、日本ペイントホールディングス(株)品川事業所において開催しました。
 地球環境保護の観点より、カーボンニュートラル(CN)社会の実現は最重要課題です。塗装に従事している関係者は、生産ラインにおける塗装工程のCO2排出比率の高さを踏まえ、連携した行動を起こさなければならないと考えます。今回の講師である大気社・吉岡秀久様は、共創「外部連携により、自社の弱みを補填し市場導入の早期化」が必要であり、一人一人が真剣にCN実現に向けて考え、知恵を出し合わなくてはなりませんと、述べています。
 その為、オンラインではなく、会場でさらに名刺交換・交流会を含んだフルスペック形式で実施しました。80名の参加者と主催者・報道関係者含めて約100名の熱気で会場は包まれました。名刺交換会にも約50名の参加があり、廻りの方々との交流を深めて頂くいい機会となりました。素晴らしい吉岡講師の御講演、各々の顔を見ながらディスカッションできるQ&A、交流会、全てで盛り上がりました。「共創」への足がかりとなることができたと思います。

●吉岡講師について
 吉岡講師は、株式会社大気社にて、塗装システム全般の開発に従事し、開発の企画から開発までを統括として管掌なさっています。因みに大気社は、自動車塗装プラントメーカーの世界最大手の一つです。まず、吉岡講師より、自分の信条と伝えたいこと3点を熱く話して頂きました。吉岡講師の信条は、『私が我が運命の支配者、私が我が運命の指揮官』であり、具体的には、周りを変えるのは大変、自分自身が変わり、協力を引き出すことです。伝えたいことは、@完璧主義からの脱却、予測困難&変化が早い時代であり、完璧よりSpeed重視である。A共創、外部連携により、自社の弱みを補填し市場導入の早期化を図る。特に塗膜は様々な技術の集合体の為。B自動化⇒自律化ラインへ、グランドデザインを描き小さなところからAI活用していくこと。

●塗装業界におけるCN実現のマクロ視点
 社会環境の変化、グローバルおよび経済的視点等の俯瞰的観点からのマクロ視点としてのCNアプローチの考え方を共有しました。グローバルでのCN目標、自動車生産工程における位置づけ、塗装工程における位置づけから、取り組むべき課題とその方向性を具体的に三本の柱での取り組みとして説明しました。

●CN実現のミクロ視点:第一の柱(リーンな塗装生産工程実現技術)
 具体的な下記の技術対応事例を判り易く、なかなか見ることができない動画を使って、説明して頂きました。
 @省エネの一番ピンとして塗着効率向上と工程統廃合と低温化技術
 A各塗装設備の省エネ技術
 BDXによる省エネアプローチと技術開発のスピードアップ
 この第一の柱は、圧巻でした。自動車塗装に関して、装置プラントメーカーからの視点でまとめ、圧倒的な事例数とその説明内容でした。セミナー後のアンケートで「良かったセクション」では、この第一の柱がトップでした。「自動車塗装CN研究会で、OEMが話した内容とほぼ同じ。」と、コメントしている方がいましたが、プラントメーカーからの視点でまとめた結果がOEMと同じであるのは、大気社が素晴らしい情報力・技術力をもっているからです。まとめ方も漏れがなく、パーフェクトでした。これを聞きたかった人も沢山いました。

●CN実現のミクロ視点:第二の柱(再生可能エネルギーへの転換技術)
 @ 再生可能エネルギーの各種動向踏まえた地域別、自社適正別アプローチ
 A 電化対応
 B 水素対応

●CN実現のミクロ視点:第三の柱(塗装代替へのチャレンジ)
 @ 塗装代替技術の比較
 A DRY加飾(OMDフィルム)技術紹介
 B CNの先を見据えて技術連携の依頼
 アンケートで「聞きたいと思ってきたセクション」は、予想どおり、第三の柱:DRY加飾でした。加飾は、今が旬であり、大気社がOMDを検討しているとのことでしたので、順当です。そして、「良かったセクション」も第一の柱:リーンと第三の柱:加飾とが同数でトップでした。大気社ラボに導入・完成した「OMDドライ加飾システム開発ライン兼モデルライン」を動画で説明して頂きました。一度、このラボプラントでテストしてみたいと、皆様、思いました。

●Q&A
 プロフェッショナルセミナーは、3時間の講演の後に、45分間のQ&A時間を設けています。吉岡講師への質問だけでなく、それに端を発して活発なディスカッションで盛り上がりました。但し、アンケートで「質疑がやや身内のやり取りとなっていたため気軽に聞ける雰囲気ではなかった。」とのコメントありました。自動車塗装CN研究会のメンバー間での討議がそう取られた様であり、ファシリテーターとして深く反省しています。

●最後に
 吉岡様、3時間を超える御講演ありがとうございました。マクロ視点とミクロ視点としての3つの柱の4パートの構成にし、ヤマを最後のパートにしたので、間延びせず、最後に盛り上げて終了することができました。アンケートで、「内容が興味深く、あっという間に時間が過ぎた。また興味がある分野に関しては参加したいと感じた。」とのコメントがあり、満足して帰られました。
 参加者の皆様方へ、本日の講演の考え方、技術紹介がCNを実現しサスティナブルな社会貢献の一助になることを期待します。
 次回でプロフェッショナルセミナーは、第10回目を迎えます。現在、日本塗装技術協会では、さらに皆様の御要望に応えるべく、リニューアルを検討中です。次回(来年開催)プロフェッショナルセミナーを是非、お楽しみにお待ち下さい。

第9回プロフェッショナルセミナー実行委員長代行
光宗 真司

主催一般社団法人
日本塗装技術協会
  
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本塗装機械工業会高分子学会日本工業塗装協同組合連合会
日本防錆技術協会材料技術研究協会日本レオロジー学会
日本印刷学会日本建築仕上学会日本油化学会
腐食防食学会自動車技術会静電気学会
日本粉体工業技術協会国際工業塗装高度化推進会議エポキシ樹脂技術協会

(順不同)

 
期日2025年 9月 12日(金) 午後1時〜午後4時45分
会場日本ペイントホールディングス(株) 東京事業所 センタービル1Fホール
テーマ「カーボンニュートラルの実現に向けて」
〜 塗装システムにおける現状と将来の方向性 〜
《講師》吉岡 秀久 氏
株式会社大気社
塗装システム事業部 開発統括部

参加資格・参加費日本塗装技術協会正会員22,000円
(複数人申込特典 @17,600円)
 協賛学協会会員22,000円
(複数人申込特典 @17,600円)
 非会員29,700円
(複数人申込特典 @23,760円)

要 旨
  地球環境保護の観点より、カーボンニュートラル(CN)社会の実現は最重要課題です。
 塗装に従事している関係者は、生産ラインにおける塗装工程のCO2排出比率の高さを踏まえ連携した行動を起こさなければならないと考えます。 社会環境の変化、グローバルおよび経済的視点等の俯瞰的観点からのマクロ視点としてのCNアプローチの考え方を共有します。 またミクロ視点として塗装工程、設備、材料及びこれから避けては通れないDX含めた対応技術をCN実現の三本の柱として、 @リーンな生産工程実現技術、A再生可能エネルギーへの転換技術、B塗装代替技術に関して具体的技術対応の事例を交えて説明します。
 特に、将来のサスティナブルな社会実現に向けての方向性として、塗装を加飾と捉えCN実現とコスト削減の両立に加えて、 新たな付加価値追加が可能となるDRY加飾技術の取り組みを長期的視点の一例として紹介します。
本日の講演の考え方、技術紹介がCNを実現しサスティナブルな社会貢献の一助になることを望みます。

1. 塗装業界におけるCN実現のマクロ視点
  @グローバルでのCN目標、自動車生産工程における位置づけ、塗装工程における位置づけ
  A取り組むべき課題と方向性(三本の柱での取り組み)

2. 塗装業界におけるCN実現のミクロ視点:第一の柱(リーンな塗装生産工程実現技術)
  @省エネの一番ピンとして塗着効率向上と工程統廃合と低温化技術
  A各塗装設備の省エネ技術
  BDXによる省エネアプローチと技術開発のスピードアップ

3. 塗装業界におけるCN実現のミクロ視点: 第二の柱(再生可能エネルギーへの転換技術)
  @再生可能エネルギーの各種動向踏まえた地域別、自社適正別アプローチ
  A電化対応
  B水素対応

4. 塗装業界におけるCN実現のミクロ視点:第三の柱(塗装代替へのチャレンジ)
  @塗装代替技術の比較
  ADRY加飾(OMDフィルム)技術紹介
  BCNの先を見据えて技術連携の依頼


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