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 第26回塗料・塗装研究発表会レポート

 第26回塗料・塗装研究発表会が、平成23年3月11日に東京都新宿区の工学院大学において開催されました。プログラムは、例年とほぼ同数の13件の一般発表の他、東京大学生産技術研究所の酒井啓司先生と同志社大学の日高重助先生による2件の特別講演で構成され、また、今回はこれまでとやや形式を変えて、できるだけ多くの方に懇親会に出席いただけるようなしくみを作って準備を行ってまいりました。
 今井八郎会長の開会ご挨拶を皮切りに、6件の発表があり、120名の参加者による活発な質疑・討論が行われました。午前の部の最後には、「次世代インクジェット技術・原理・現状・将来性」と題して酒井先生にお話をいただきました。
 
物理学の基本原理に基づいて独自の発想で作られたピコリットルの液滴発射装置や少量サンプル用の粘度測定装置など塗装・塗料分野にも関連性のあるユニークな装置の数々をご紹介いただき、参加者は大いに関心をもった様子でした。
 昼食をはさんで午後の部がはじまりましたが、2つ目のセッションの途中で、誰も予期していなかった出来事が起こりました。最初の日付をご覧になってピンと来た方もいらっしゃると思いますが、あの未曾有の大災害となった東日本大震災に遭遇したのです。発表が行われている最中に震度5強の地震におそわれました。会を中断し、しばらくその場で待機しました。会場側の配慮でいち早くスクリーンに投影していただいたテレビ画像を固唾を呑んで見守り、起こった出来事のすさまじさにただ呆然としました。犠牲になられた方々のご冥福と、被災された皆様が一日も早くもとの生活に戻られることをこの場を借りてお祈り申し上げます。
 その後、工学院大学の災害対策本部の指示に従って一旦会場を出て建物内の指定場所へと移動しました。この時点で発表会を終了とすることも考えましたが、置かれた状況を総合的に勘案して、むしろ継続した方がよいと判断し、余震がある程度おさまったところで再開させていただきました。これにあたり、本協会理事の工学院大学・佐藤光史先生をはじめとする災害対策本部の皆様、発表会のお手伝いをいただいていた佐藤研究室の皆様には、ひとかたならぬお世話になりました。心より御礼を申し上げます。
 余震さめやらぬ中、発表会が再開され、非常事態にも関わらず皆様には極めて冷静に臨んでいただき、それまでと変わらない活発な議論が続けられました。最後の日高先生の「粉体シミュレーションによる静電粉体塗装操作の設計」と題されたご講演も、原子・分子のレベルから粉体粒子のサイズまで、トータルで帯電粒子に関わるシミュレーションを行うという幅広いご研究の一端を伺うことができ、粉体塗装についての一段深い理解につながる大変有意義なものでした。予定時間を大幅に過ぎることにはなったものの、発表会を最後まで続けることができたのは、日高先生はじめ発表者の方々、また、会場で発表を熱心に聞いていただいた方々のご協力のおかげであり、心から感謝申し上げます。
 予断を許さない状況でしたので、例年発表会当日に行っている研究発表会優秀賞の選考は延期とし、また、予定しておりました懇親会も中止とさせていただきました。懇親会でのいっそう活発な討議や交流を期待しておりましたが、今回はお預けとなりました。今回のことを通じて、主催者の責任や危機管理意識の重要性を改めて認識しました。
 今日もなお、原子力発電所の問題含め容易ならぬ状況が続いてはおりますが、災害からの復興をはじめとして、日本の今後の発展は優れた技術の創出にかかっていると信じております。そのためにも、次回も引き続き塗料・塗装の最新の研究成果に関する多くの積極的な発表が寄せられて、一層の活発な議論が行われることを期待しております。

研究発表委員会委員長:工藤一秋
平成23年5月20日

追記
 後日、研究発表委員会で審査を行い、研究発表優秀賞を次の2件の発表に対してお贈りすることとなりましたので、お知らせいたします。
(敬称略)
「スプレー塗装における塗料使用量削減について"新型エアキャップの開発"」
     旭サナック株式会社 ○白松憲一郎
「塗料用高分子粒子の接触帯電機構に関する実験的検討」
     同志社大学 ○東浦大史、下坂厚子、白川善幸、日高重助

主催日本塗装技術協会
協賛日本化学会色材協会日本塗料工業会
日本塗装工業会表面技術協会日本塗装機械工業会
日本工業塗装協同組合連合会日本防錆技術協会日本自動車車体工業会
高分子学会日本建築学会日本油化学会
土木学会日本鉄鋼協会腐食防食協会
自動車技術会日本金属学会応用物理学会
材料技術研究協会日本レオロジー学会日本印刷学会
静電気学会日本粉体工業技術協会日本塗料検査協会
粉体工学会 ( 順不同 )

期日平成23年 3月11日(金)
会場工学院大学 新宿キャンパス 3階 アーバンテックホール
〒163−8677 東京都新宿区西新宿 1-24-2

発表申込締切平成22年10月 8日(金)一般発表13件
参加申込締切平成23年 3月 4日(金)参加者120名
参加登録費当協会会員・協賛学協会会員8,400円
若手会員(35歳以下)6,300円
学生1,050円
研究室学生会員無料(参加登録必要)
非会員10,500円

プログラムの演題をクリックすると発表概要をご覧いただけます。

プログラム

9:30
開会挨拶  日本塗装技術協会 会長  芝浦工業大学 教授 今井 八郎 
発表会場新宿キャンパス 3階 アーバンテックホール

[一般講演]  (一般講演の氏名○印は発表者とします)
9:40-10:40
座長  本田 康史(BASFコーティングスジャパン)
1)
重防食塗装系の塗装方法の検討                
 (関西ペイント)○後藤 宏明、(土木研究所)守屋進、(神東塗料)内藤義巳、
 (大日本塗料)山本基弘、(中国塗料) 斎藤誠、(日本ペイント) 藤城正樹
2)
環境対応型省工程重防食塗装システムについて         
 (関西ペイント販売)○堀誠、横田雅之
3)
塗膜下における金属の腐食---界面の濡れを中心として---    
 (日本電信電話)○齋藤博之、澤田孝 
10:40〜10:50
休 憩 
10:50〜11:50
座長  古川 博康  (新日本製鐵)
4)
環境対応型表面処理剤の紹介                 
 (日本シー・ビー・ケミカル)古川淳司、○早坂哲朗
5)
ミャンマー産漆液を用いたクロムフリー防錆塗料の開発     
 (明治大学)○中島圭一、宮腰哲雄
6)
オレンジピールをもたらす溶媒揮発過程における自発的パターン形成の温度依存性  
 (慶應義塾大学)○高相優奈 、朝倉浩一

[特別講演1]
11:50〜12:30
座長  座長  工藤 一秋  (東京大学生産技術研究所)
 
演題 「次世代インクジェット技術 -原理・現状・将来性-」                       
東京大学生産技術研究所 教授 酒井 啓司先生
12:30〜13:30
休 憩 

[一般講演]
13:30〜14:30
 座長  檜原 篤尚  (関西ペイント) 
7)
省エネ・静音塗装ブースの開発             
 (アネスト岩田)○鈴木啓吾
8)
樹脂部品塗装ラインのゴミブツ診断           
 (関西ペイント)○鎌苅剛敏、津田益ニ、岩村達也
9)
離型剤塗布技術の研究                 
 (アネスト岩田)○須藤将伍、遠藤剛史、桑田透
14:30〜14:40
休 憩 
14:40〜15:20
座長  武井 昇   (職業能力開発総合大学校) 
10)
境界要素法を用いた電着塗装シミュレータの開発     
 (東京工業大学)○ 水野哲、大西有希、天谷賢治
11)
回転霧化塗装で発生する霧滴サイズに不均一性をもたらす要因の検討
 (慶應義塾大学)○吉居 智規、朝倉浩一
15:20〜16:00
座長  樋川 浩一   (アネスト岩田) 
12)
新型ベルエアキャップと塗料使用量削減について
 (旭サナック)○白松憲一郎
13)
塗料用高分子粒子の接触帯電機構に関する実験的検討
 (同志社大学)○東浦大史、下坂厚子、白川善幸、日高重助
16:00〜16:10
休 憩 

[特別講演2]
16:10〜16:50
座長  伊藤 春揮   (旭サナック)
 
演題 「粉体シミュレーションによる静電粉体塗装操作の設計」
 同志社大学 教授 日高 重助先生

注)一般講演の氏名○印は発表者とします

第26回研究発表委員会委員名簿

委員長工藤 一秋東京大学生産技術研究所
副委員長馬場 茂成蹊大学
委員太田 資良日産自動車(株)
委員伊藤 春揮旭サナック(株)
委員光崎 守トヨタ自動車(株)
委員森山 信日本ペイント(株)
委員青山 雅之日本パーカライジング(株)
委員武井 昇職業能力開発総合大學校
委員檜原 篤尚関西ペイント(株)
委員樋川 浩一アネスト岩田(株)
委員古川 博康新日本製鐵(株)
委員本田 康史BASFコーティングスジャパン(株)


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